プロローグ 神約
「光あれ」
すると、世界は光に包まれました。
人類が、魔術を手に入れた瞬間です。
遥か昔、人類は『神』と『契約』を結びました。
当時の人類は、そのほとんどが無力で、悪魔や魔物に脅かされる日々を送っていました。
ですが、人類の中に、特別な力を持ち、民を救う『英雄』と呼ばれる存在がいました。
『神』は、選ばれし十二人の英雄に、『契約』を持ちかけました。
神は言われました。
「もし、我の声に従い、我の契約を守るのであれば、汝等に、『希望の光』を授けよう。汝等は、我の民となり、我の力となり、我の一部となる」
そして、神は『希望の光』を与える条件として、次の三つを提示しました。
一、汝は、光の守護者として、悪を裁き、闇を祓わん。
一、汝は、神の教えに従い、希望と安寧の光を世に満たさん。
一、汝が契約を違えし時、神罰を以て魂を浄罪されることを誓わん。
十二人の英雄は、『神』の『使徒』となって、契約を結ぶことにしました。
しかし、契約の儀式の途中で、一人の英雄が『神』を裏切ったのです。
「私は既に悪魔と契約した身、この契約は私の『奇跡』によって、改変させてもらおう」
後に『叛逆の使徒』と呼ばれる彼は、英雄の持つ特別な力を使い、契約の内容を改変しました。
こうして、契約は不完全な形で完了され、『神』の与えた光は、叛逆の使徒の支配する国には届きませんでした。
彼の国は深い闇で覆われたのです。
『神』から『希望の光』を与えられた人類は、光の魔術を使って、闇の勢力と戦いを始めました。
契約から千年が経った今も、戦いは決着を着けていません。
ですが、『神』は契約の執行者として、『神の子』を遣わせました。
その名は――




