7話 『結構気になってて』
とりあえず教室で事後報告をしなければならなかった。
各部隊ほぼ無傷、だというのに俺らはこの有様である。
体の傷はフルールのギフトで治すことが出来たが、破けた服までは元に戻らない。
「第8部隊、何があった」
面倒ごとがあったのだろうといううんざりした顔で教師が尋ねてくる。
「上級悪魔と遭遇、後、撃退しました」
アカギが淡々とそう述べた。
余計なことを話すと俺がどうなるか分からない。
彼女はそれが分かっているのだろう。
「上級悪魔と? 生還だけならまだしもよく撃退できたな」
怪訝な顔をして4人をじっと見つめる。
何も言えない。
余計なことを言うとそこから詮索されかねない。
「まあいい、死ななかったなら何よりだ」
探るのすら面倒だ、と言わんばかりの顔で報告は打ち切られたのだった。
実地演習が終わり、放課後になった。
正直何がどうなってああなったのか俺にはよく分からない。
制御さえできればいいのだが、発動条件すら分からない。
難しい......
「ちょっといい?マヒロくん」
一人で考え込んでいるとそう顔を覗き込んでいたのはリンネだった。
「私結構あなたのこと気になってて、お茶でもどう?」
ん!?
これは王道の展開!?
窮地を救ってくれたヒーローにヒロインが惚れるというお決まりの展開だろうか。
ようやく異世界らしくなってきたじゃないか。
俺の能力はよく分からないけど分からなくていいや! これでもうハッピーエンドだ!!
「もちろんいいよ」
顔はにやけてはいないだろうか。
ニッコリとスマイルを決めそう返す。
「じゃあシスターバックスに行こ!」
シスターバックス、どうやら学校併設のカフェらしい。
どうなってしまうんだ。
いきなり告白されても困っちまうな。
そんなことを考えているとあっという間にカフェに着いた。
席につき、とりあえずブラックを頼んだ。
こういう時はブラックに限る。
かっこつけたいからだ。
「それで? 態々カフェに呼んだってことは何か話でもあるんだろ?」
俺は白々しくそうすっとぼけてみる。
「うん、そうなんだ」
何やら俯いている。
いつも元気な子がなんだ、結構可愛いところあるじゃないか。
そして彼女は顔を上げ――
ギフトを発動させていた。
「んなっ、お前何してるんだよ!」
なぜこんな場所でギフトを発動させるんだ。
「んー、やっぱ違うなぁ」
予想通り、という表情を浮かべ残念そうにする。
「違う? それはギフトを発動させたことと何か関係はあるのか?」
「私のギフトは色々見えるって言ったじゃん? それで君の危険度を計ってみたの」
リンネの目は敵の危険度、すなわち戦闘力が見えるらしい。
「んで、違うって何がさ」
「危険度っていうのは基本的に短時間で上下するものじゃなくてね。修行とかを積んだ上で上がったり、長いブランクがあってようやく下がったりするものなんだ」
「要するに......」
「そう、マヒロ君の戦闘力は上下を繰り返している。それもかなりの幅でね」
「それはいつだ?」
「一回目は君がアカギちゃんに癪に障るって言われた時だよ。微弱だけど危険度の上昇があった。」
あの時のリンネの目はそういうことだったのか。
では次は予想通りあのタイミングか。
「そして次は君が上級悪魔と戦ってる時。正確には戦闘中は私のギフトが使えなかったからあの悪魔が逃げた時かな。一瞬ではあったけど君の危険度が見れた。途方もない数値だったよ」
「ねえ、君は何を隠しているの? 本当のことを教えて?」
紅色の瞳で、意識はしてないのだろうが上目遣いでそう伝えてくる。
本当も何も俺には何も分からないんだって! 何を教えればいいんだ!
俺は困惑してしまった......
昨日はワクチン2回目の副反応でぐったりしていましたね。
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