表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実は俺が最強だった件  作者: はひ
7/11

6話 『格下ってことなんだよ』

「今から死ぬお前らへのせめてもの餞別をくれてやる。俺の名はルシフ」


 ルシフは自分の名前を知る権利をくれてやると言わんばかりにそう名乗った。


 実際、死の感覚が近づいてくるのを感じ取らざるを得なかった。

 確かにアカギもリンネも強いだろう。しかし絶対的な強者との差異というものは存在する。


 勝てない。


 それは俺も二人も明確に感じ取っていた。

 

 出口を塞がれた以上逃げ道は無い。誰かを囮にしても時間稼ぎなどする間もなく全滅させられる。


 どうする。


 俺は、俺らはどうすればいい。


 アカギは格闘戦の構えを取った。

 なるほど、勇敢な女だ。死を悟った今でも足掻くのをやめない。

 

 が、女のそれは足搔きにすらならなかった。


 構えを取ってからコンマ幾秒だろうか。10mはあったであろう距離から間合いを詰められ、確かにアカギの腹には拳がのめり込んでいた。


「がっ、ハァッッ!」


 呼吸も出来ずにその場で膝から崩れ落ちる。

 もはやもがく余裕も彼女には残ってない。


 俺には早すぎて動きを捉えることすら敵わなかった。

 

「次は、お前だな」


 冷徹に、淡々と述べ鋭い眼光が俺に向かって飛ばされる。

 この男には単なる作業に他ならなく、暇つぶしと同義なのだろう。


 くそっ、どうにもできねえのかよ。


 まだ何か手は――

 

 そう思ったが最後、俺の視界は真っ黒になって......




 気が付くとそこは見知らぬ天井、いわゆる病院のような所であった。




 目を覚ますと三人とも生きていた。幻覚だろうか。

 安堵のような恐れのようななんとも言い難い視線を俺は向けられていた。


「マヒロ、君は......」


 アカギが口を開くと遮るようにして


「いい、私から説明するよアカギちゃん」


 とリンネが何やら重要な話をするようだった。





 少女は見ていた。一人の仲間がまた無力に倒されるところを

 次は私だ。奥の手はあるが恐らく通じない。仲良く皆あの世行きだ。

 そう思わざるを得なかった。

 くるりとルシフが少女を向く。マヒロは既に動かない。


 ルシフは一歩踏み出し、最後の仕事を終えようとしたその時――


「ちょっとまだ早えんじゃねぇのか?」


 信じられない、ついさっき倒されたはずの男が立ち上がっていた。

 立ち上がり、肩を掴んでいた。

 

「あァ!?」


 苛ついたように振りほどこうとするが振りほどけない。

 

「!?」

 

 さっきまで弱者だった者が、踏みにじられることしか出来なかった者が自分にたてついてきている。

 なめていたが流石英雄候補生といったところなのか、と軽く感心し、

 拳を振りかざす――

 

「おせぇ」


 ルシフの拳は虚空を貫いた。

 信じられない。赤髪の少女に対する時よりも本気を出した。それなのに避けられた。

 しかし自分が負けるはずがないのだ。なぜならギフトも身体能力も自分は最強なのだから。


「お前はギフトを使えて、俺は使えねぇ。この差がどういうことか分かるか!?」


 ついさっきまで骸と化していた男はそう叫びルシフの後ろに立っていた。


「おめえは格下ってことなんだよ!三下ァ!」


「てめえ、一体どんなからくりで......」


 素早く反応し不意打ちの蹴りを食らわす。

 そのつもりだった。

 

「んなスピードで当たるわけねえだろうが!」


 マヒロはそれを凌駕する速度で蹴りを去なし、

 ルシフの腕を掴み、雑に投げ飛ばした。


「!」


 受け身を取ることすら出来ずに顔から岩に衝突した。

 額からは鮮血が流れ、吹き飛ばされた威力を物語っている。


 ルシフは思う、

 パワーもスピードもさっきまでとは桁違いだ。

 ギフトは使えないはずだ。ならばこれは素の能力か?ありえない。


 ルシフは初めて化物に遭遇した。


「まだまだくたばっちゃいねぇよなぁ!? もっと楽しませろや!」


 迅雷の如き速度でマヒロが襲い掛かる。

 単純だが、強烈な頭部への拳撃。


「そう簡単にやらせるかよ!」


 ルシフのガードが間に合った。

 否――


「フェイントっていうのは相手の反応速度に合わせねぇといけねぇのがつれえよなぁ!?」


 頭部への攻撃に対してのガードをしたのだ。

 もちろん空いたのは腹部――


「オラァッ!」


 ゴキゴキボキ

 鈍い音が洞窟内に響き渡る。

 ルシフの右あばら骨はボロボロに砕け散った。

 それでも意識を失わずにいられるのは流石に上級悪魔といったところだろうか。


「グッ、このままでは......!」


 本当に死ぬ。

 しかし、一方的で圧倒的な暴力の前では為す術がない。

 そもそもマヒロのフェイントを見抜いて防御したところで規格外の速度を前には意味がない。

 マヒロはそれを見てから対応する。対応出来る力がある。

 要はルシフは後出しじゃんけんを強いられているのである。

 

 「てめえ、虐殺するとかほざいてやがったか? 出来損ないのてめえに今から虐殺の手本を見せてやるよ!!」


 そう言うと前腕、上腕、鎖骨......と四肢を拳で粉砕していく。


「ッッ!!」


 声にならない声を上げ、今にも事切れそうになりながらもそれでも死ぬまいと意識を保つ。

 

「――あれがマヒロ・アリマ? 有り得ない......」


 意識を取り戻したアカギは変わり果てた残虐性とその圧倒的な力を前に信じられないでいる。


「これで終わりにすっか! そろそろ逝けや!!」


 全力を込めてマヒロが拳を振りかざす。

 凄まじい覇気だ。並大抵の英雄候補生が出せるものではない。

 

「......ひっ」


 呼吸のような振り絞った声でルシフはニヤリと笑った。

 

「あぁ?気でも触れたのか?」


 一瞬マヒロの動きが止まり――

 

「坊ちゃま、少しおいたが過ぎますぞ」

 

 突如ルシフの背後の壁から闇が現れ、ルシフを飲み込んでいった。


「てめっ! 待ちやがれ!!」


 瞬時に捕まえようとするも間に合わなく、そして同時にマヒロの意識も途絶えた。




 そして舞台は現在に戻り――


「これが私の目で見た記憶。君は一体何者なの?」

 

 何者なの? と聞かれて自分が何者である。と即答出来るものはそういない。

 そんなの俺だって知りたいよ。というかそんなことがあってますます自分が何者なのか分からなくなってきちゃったよ。

 とりあえず皆無事なのは良かったけど、これから俺はどうなってしまうんだろうか。

 解剖でもされるのだろうか。

 というか自由に使えないチート能力とか求めてないんだけど!!

これからようやく本番というかやっとキャラ紹介が終わったところですね。

感想とか評価とか頂けたらとても喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ