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実は俺が最強だった件  作者: はひ
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5話 『帰りてぇ』

 よくは分からない。

 何が起きたか分からない。


「はいはい、歓談はそこまでだ。今日は何のためにパーティを発表したのか考えてくれ」


 諌めるかのように気だるげな声が教室に響いた。

 この場は引き下がってもらうしかない。

 

「今から実地演習だ。互いのギフトの確認は済んだだろ。各部隊列につけ」


 実地演習? まさか戦うんですか? 足を引っ張る気しかしないし連携も取れる気がしない......

 

 波乱の実地演習はこうして始まった......




「実地演習っていうのは実際の前線で下級悪魔と戦うの」


 リンネはニコニコしながら、まるでさっきのことなど何もなかったように歩きながら解説してくれた。


「まあ下級だし、英雄候補生なら肩慣らし程度だよ。お互いの実力を知るのと連携を高めるのが目的なんだ」


 へぇ、俺でも倒せる程度ならそりゃよかった。

 

 学校を出る前に要望者には武器の支給が行われた。もちろん俺は素手での戦闘は無理なのでかっこいいからという理由で業物を支給してもらった。


「ニホン刀か......心得はあるのか?」


 アカギもまた切り替えの出来る子で先ほどのことは水に流して率直な質問を投げかけてきた。

 というかこっちの世界でも日本という固有名詞があるんだな。


「いいや、全く無いんだけど何もないよりはマシかと思ってね」


 低級の身体強化だけでの殴り合いで戦うなんて御免だ。

 ましてや命のやり取りだ。いくら敵が弱くても用心しすぎるということはないだろう。


 歩いて歩いて洞窟の中に入った。


「ついたよ!」


 リンネが溌剌とした声で言った


 どうやら俺たち第8部隊の戦場はここの区画らしい。

 低級悪魔というものは初めて見たが、よく見る虫歯菌のイラストのような風貌をしている。

 これなら俺でもやれるんじゃないか!?


 「行くぞ!」


 アカギは気合いのこもった声でそう言うと居合の構えを取った。

 

 「来い! 『炎犬 不知火』!」


 そう言うと懐には深紅に染まった刀身の刀が現れた。

 なるほど、あれがアカギのギフトであの構えが発動条件なのか。


 すらりとそれを抜き、目の前の悪魔を一体、また一体と切り倒していく。

 刀身からは焔が溢れ出ており、切り倒した敵の塵さえ残すことは許さない。


「さーっすが、アカギちゃん! 私達もやるとしますかね!」


 そう言ってリンネは目を見開くと紅色の瞳が姿を現した。

 リンネのギフトだろう。

 しかしリンネは敵に向かって駆けていき......


「お先に! 私のギフトはあくまで状況分析にすぎないの! だから戦闘は基本素手だよ!」


 余裕そうな雰囲気を出しつつ古武術であろう動きで一体一体確実に仕留めていく。

 そういえば英学の生徒はギフトもさることながら生身の戦闘にも長けているのだっけか。

 こりゃ俺の身体強化は産廃というわけだ。

 帰りてぇ......


「俺達も行くぞ!フルール!」


 と、俺は頼れる仲間っぽさを演出しつつフルールの後ろについていく。

 すまんフルール! 俺は情けねぇ!!


「私のギフトは『自分が傷だと認めた部分を自由に弄る』ギフトです。もちろん傷を癒すことも出来ますが、転じて攻撃にも使えます!」


 そう言って悪魔の攻撃を軽やかに避けつつ悪魔の体に触れた。

 すると悪魔の臓物が飛び出し白目をむいて悪魔は倒れた。


 天使のような悪魔の能力

 フルールは悪魔の内臓を傷物だと判定し破裂させたのだ。

 恐ろしい......


 何はともあれ俺も頑張らなくては!

 

 指を鳴らし剣を構える。身体強化、1.5倍


 思い切り力を込めて剣を振りぬく。当たれ......!


 当たった! そして倒せた。

 生臭い悪魔の体液には嫌悪を示したが、俺も戦えるのだという喜びに胸を震わせる。

 

 周りを見ると皆一体、また一体と敵を薙ぎ倒している。

 俺の討伐数はまだ一体ではあるが、初めての戦闘にしては足を引っ張っていないようで誇らしい。




 強化、斬る、叩き斬る

 この繰り返しで夢中だったが、いつの間にか無傷で敵を掃討出来ていた。


 とても喜ばしそうにしている俺をよそ目に皆はあたかも当然のような顔をしていた。

 ぐぬぬ、エリートどもめ。


 これでとりあえず問題はなく帰れる。

 そう思った――


 刹那、衝撃が走った。


 轟音とともに目の前には人の形をした何者かが現れた。

 一番洞窟の出口の近くに立っていたフルールは倒れている。

 腹部からは酷い出血、もちろんフルールは自分で治せるのだろうが、攻撃をしたものに俺らは気付かなかった。


「戦闘用意!」


 苛烈な声を上げ、アカギが居合の構えを取る。

 

 が、しかし。


 何も変化は起きない。


「そんな......」


 有り得ない、という表情を浮かべるアカギ。

 きっとギフトの発動限界に達していたわけでもないのだろう。

 だというのに『炎犬 不知火』は現れない。現れてくれない。


 「ギフトが発動しない......?」


 リンネも啞然としてその場から動けないでいる。

 部隊に困惑が走る。

 もちろん俺の身体強化も発動しない。


「あーっ、それ無駄だから。意味ねぇんだよ。」

 

 一人の男がこちらに向かって言葉を投げかけた。

 

「上級......悪魔......!」


 リンネは驚きを隠せないでいる。

 上級悪魔?ここには下級悪魔しか現れないのではなかったのか?


「お前らのギフトはもう使えねぇ、それが俺のギフトだ。こっからは攻守交代、お前らが虐殺される番だぜ!」


 上級悪魔は無慈悲に獲物にそう言い放った。

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