最終章の予感 前編
〈最終章の予感〉
「え?父さんかもしれないひと・・・生きてるの?」
期待と嬉しさで弾む心。
それを映さない顔。
「ええ。まだ意識はないけど、一命はとりとめたって・・・」
ガチャン
超旧式の電話を置く狼男。
座っているソファから飛び出し、襟首を掴まれる僕。
振り返ると姉さんが顔をしかめている。
「意識がないなら、会いに行く意味はない」
「そんなことないよ。僕が会いたいんだ」
「兵がうろついてるわ」
「姫の小城に様子を見に行ったけど、最悪ね」
三人はドアの前にアリスを発見。
腰に手を当てている。
「その服、いつの間に?」
ウルフマンの質問。
さぁ?と肩をすくめるアリス。
また着替えている。
「そんなことより、卵男が死んだそうよ」
『はぁっっ?』
重なる声。
重なる疑問。
狼男と兎少年の半笑い。
同時に。
『ありえない』
「どうして?半不死、ってことは半分は死ぬ可能性がある、ってことでしょう?」
「・・・・・・・・・まさか本当に?」
「冗談は好きだけど、嘘は嫌いなの」
ウルフマンは目を細めた。
「新薬を飲んだのか・・・」
「女王は気がふれて―・・・」
アリスは僕を見る。
「君を見つけて殺せ、って」
愕然とする僕
唖然とする狼男
呆然とする姉さん・・・
「あの悪魔魔女め・・・」
「魔女は余計だわ」
心外そうなアリス。
無視をして僕を見る姉さん。
肩をつかまれる。
「逃げようっ」
「・・・え?」
「この森からっ」
「なら俺も行く」
全員がウルフマンに視線。
「今度は俺がロンリー・ウルフになっちゃうからね。兎追いを楽しむよ」
「狩人が追いかけて来るよ?」
狼男は空中を噛み、
「美味しいかしらね?」
と不敵笑い。
姉さんの微笑。
「父さんは・・・?」
僕の質問。
「一緒じゃダメ・・・?」
気まずい雰囲気。
そうか・・・僕はこのあと姉さんとケンカをして、仲直りをして・・・
そう。
そのあとマスターの研究の話を聞いたんだ。
逃げるのに体がふたつあるのは不便だし、
何より、父さんと血の繋がった体に戻りたかった。
だから・・・
マスターにお願いしたんだ。
マスターは「危険だ」と言った。
「できたばかりだ。失敗すればどうなるか分からない」
でも僕は・・・必死でお願いした。
マスターの袖を引っ張って、泣きながらお願いしたんだ。
「・・・・・・よかろう・・・」
帽子屋の地下には研究所。
涙で見えにくかったけど、そこは機械に囲まれた部屋だった。
全体が銀色で、壁はデコボコ。
部屋自体が装置らしい。
真ん中の台に寝かされて、
ぬいぐるみを胸に抱いて・・・
「本当にいいんだな?」
僕は力強くうなずいた。
そして・・・
そして僕は・・・
死んだ・・・。




