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ポピーズ



 〈ポピーズ〉



 迷いの森を走る少年。


 傾き始めた昼明かり・・・


 黒こげの行く先・・・けしの花畑だった場所。


 立ち止まる少年。


「これは・・・?」


 恐ろしい鳴き声。


 炎を噴き出す大きな体は、まるで山のよう。


 ドラゴンが少年を見つける。


 呆然としていた少年は逃げ出そうとして、炭となった倒れ木につまづいた。


 赤くそまる視界。


 目の中に映る炎。


 絶対絶命?


 突然飛び蹴り。



 悲鳴をあげるドラゴンの横っ面を蹴り上げたのは、小姓の格好をしたアリスだった。



 女物の傘を片手に。

 そのまま空中を落下・・・

 いや。

 超低空飛行をしながら、

 少年に手を伸ばす。


「つかまってっ」


 少年がとっさに手を伸ばすと、

 アリスはそのまま上昇。

 空に舞い上がった二人の体は、なぜかほとんど風の抵抗を受けずにいる。


 少年は下を見る。


 ドラゴンが小さくなってゆく。


 森が小さく・・・

 塔が見下ろせるまで高く・・・


「どういうこと?」


「磁場のせいよ。今夜は満月に一番近いから、磁場が狂いはじめてるのっ」


「磁場が狂うと飛べるようになるの?」


「今回はなぜか大きいの。さっきの地震もそのせいよ」


 薄いピンクの傘を片手に、

 もう片方には少年ひとり。


 白く浮かぶ月・・・


「さっきの・・・アレ、ドラゴン?」


「地震のせいで時空が歪んで、別の世界が溶けてきてるの」


「別の世界にはドラゴンが?」


「もちろん。きっと魔法の世界が溶けてるから、私も飛べるんだわ・・・」


「帽子屋に連れてってくれる?」


「お安いご用よ」


 アリスはスピードを上げる。

 揺れるバスケット。

 冷静を保つのは意外と大変・・・


 帽子屋が見えてくる。


 裏庭の畑。


 足をばたつかせながら降りる。


 傘をたたむアリスに礼を言いながら横切り、姉さんの部屋へ。


 布団の丘にダイブ。


「うっ・・・」


 くぐもった悲鳴。


「姉さん・・・父さんが・・・」

「どうしたっ・・・?」


 布団の中から顔を出した姉さんは、驚きながらも優しく頭を抱いてくれる。

 つかの間の安らぎ・・・


「父さんが魔女に・・・」

「ううっ、重いっ」


 下に奇妙な感覚・・・


 目が合う。


 僕は涙目の中、姉さんの隣に寝ている狼男を見つけた。




―ポピーズ―


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