金の糸 【壱】
〈金の糸〉
馬車から
彼の顔を見つけた瞬間、
僕の中で
何かが弾けた・・・
いてもたっても
いられなくて・・・
僕は馬車から逃げ出して
彼を追いかけていた・・・
キムは
僕を孤児院に入れるまで
昔の仲間の話を
よくしてくれた・・・
母さんは美人で
キムの初恋の相手だったとか
父さんは狙撃が上手いけど
子供っぽいだとか・・・
金髪で
青い目で・・・
お前は
父さんそっくりだって・・・
キムは・・・・
少しさびしそうに
話してくれたんだ・・・
違和感・・・
本能。
茂みに隠れていた僕は、異常が来るのを察知した。
背後・・・?
左右?
分からない。
遠くから・・・
波が来る。
空気が変化している。
首のうしろの産毛が逆立つような感覚がしている。
波が
押し寄せてくる。
足元に視線。
小石が跳ねている。
木々がざわめいて・・・
いや。
小動物や鳥が騒いでいるのか。
辺りに視線を巡らせる。
大きな気配・・・
空気が歪んでいる?
動物的な恐怖。
危機回避本能、作動っ。
何か来るっ。
僕が頭を低くしたと同時、
大地震。
地の底がせり上がるような、
中華ナベの料理みたいな、
空と大地のせめぎ合い、
大地のジレンマ
怒りそのもののような。
何か大きな音がして、
それが塔のガラスが大破する音だと知る。
降りそそぐ悪夢が・・・
茂みの中にも飛んでくる。
僕は・・・不思議と無事だった・・・
白いローブを着ていたからだ。
破片が体に当たる感触はあったけど、痛みは無かった。
足の裏にじんじんと余韻。
恐怖とショックでしばらく動けない。
とりあえず無事・・・。
これは何でできているのだろう?
ローブはどこも破れてないし、汚れひとつない。
深呼吸・・・
キムの言いつけ。
大変な時ほど落ち着け。
深呼吸。
地面に触れないようにそっと立ち上がり、
ローブのシワに溜まったガラスを払う。
怖いほどの静寂。
僕は塔を見上げる。
視線を下げる・・・
粉々のガラス。
なぜ
あかい・・・・・・?
僕は深呼吸。
落ち着け
落ち着け
これは、ただの悪夢だ
幻覚だ・・・
アリスのが移ったんだ。
深呼吸。
おちつけ・・・
僕は茂みを出た。
ゆっくり
ゆっくり。
靴の下で、ガラスが砕ける音を感じながら、
赤い真ん中。
何か
とても
人間に似ているものに
近づく・・・。




