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ラプンツェル 《03》


 即死じゃないけど、

 確実にやって来る死の気配。


 薄れゆく意識・・・


 僕は幸せ。


 抜けてゆく体温

 抜けてゆく生命力

 抜けてゆく気力

 抜けてゆく意識


 抜けてゆく、魂・・・?


 ああ・・・

 やっと・・・・・・


 みんな・・・


 この記憶だけは。


 みんなとの記憶だけは

 放さないから・・・


 放さずに・・・

 抱きしめて


 みんなのもとへ・・・

 行くから・・・


 アナス

 クナイ

 ケトゥ

 カーリー

 テフ


 キム・・・たぶんまだ、生きてるよね?

 置いてってごめん・・・


 マイ・ヒタ・・・

        今、どこにいる?


 お前こそ薄情だよ。


 僕が死ぬ時ぐらい、生霊飛ばしてでも来るべきだ・・・

 マヌケ野郎。


 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・?


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?


 ああ・・・本当に来たのか?


 それとも死神のお迎えか?


 足音・・・

 誰かの気配・・・


 教授?


 ・・・・・・・ちがう。


 ほほに触れる指先。

 細い指だ。


 目を開ける。


 思うようにいかない。

 まぶたが重い・・・

 まぶしい

 赤い膜・・・

 

 血が視界を遮っている・・・。



 逆光。



 細い人影。


 死神・・・?


 いや

 少女・・・


 運がいい。


 可愛らしい少女の死神だ。


 フードの中。


 その顔は・・・

 その顔は・・・


 『僕』・・・?


 少女のバスケットのふたが開き、うさぎのぬいぐるみが顔を出した。


 うさぎがよろけながら這い出ようとしている。


 少女は無表情。

 僕を見ている。


 逆光・・・


 憎らしや・・・


 顔が・・・見えない・・・


 緑色の服を着た、うさぎのぬいぐるみが動いているのは分かった。



 フラッシュ・バック。

 トラックの中。

 赤い髪のカーリー・・・


 【違う】


 『赤』


 フラッシュ・バック。

 プリンセスの髪色。


 【・・・違う】


 プリンセス・ローズ。

 『バラのつぼみ』


 【違う】


 フラッシュ・バック。

 馬車

 中の美女

 わずかに見えた髪先・・・


 【見つけた・・・】


 馬車の中の、少年。


 うさぎを抱いた少年。

 うつろな目の少年。


 その目が移動して、

 流し目が・・・

 僕の視線と合わさって・・・

 その顔を見た途端、

 そう

 あの顔は・・・


 この顔は・・・



 僕は精一杯、目に力をこめた。



 うさぎの首に光る・・・

 エメラルド。


 バニー・ボーイの弟?


 〝孤児院で一緒だったのさ〟。


 

 僕は最後の力をふりしぼって、

 片腕をのばした。


 少女がフードを肩に落とす。


 黒い髪の三つ編み。

 長い黒髪・・・

 白い肌。

 青い目。


「・・・・・・・・・テ・・・・・・・・・・・・・・・・・・フ・・・・?」


 指先が三つ編みにからむ。

 僕は力つきて、

 腕を落とす。


 カツラがしゅるりと落ちて、

 むけた先に

 逆光に透ける金髪が現れた。


 見慣れた

 なつかしい顔・・・


 昔の僕の顔・・・


 目がかすみ、閉じてゆく。


 意識も同時に消えてゆく・・・



 ああ・・・

 君は・・・・・・・・・・

     君は・・・・・・・・・


 意識が消滅する瞬間、

 少年の声を聞いた気がした。


 最初で

 最後の

 愛しいわが子の声を。



「・・・父さん・・・?」


 

 こうして僕は


 死んだ。







―ラプンツェル―




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