ラプンツェル 《01》
《ああ・・・・・・そうか。『呪い』と言えば、呪いか・・・》
え?
なに?
《思い出したよ・・・
・・・そうか・・・君は・・・》
なに?
僕が何っ?
《だから
勘違いしたんだね?》
何を?
《世界は・・・》
・・・カケラで
できている?
《そう》
《そして》
《記憶も・・・》
カケラでできている?
《そう》
・・・・・・
・・・・・・だから?
《記憶のカケラは、まるで万華鏡》
何が言いたいの?
《美しい》
《けど》
《どこか奇妙》
《同じカケラの集まりが》
《見ようによって》
《別のものへと・・・》
・・・・・変化する?
〈ラプンツェル〉
「おぉ、ラプンツェル。お前のその美しく長い髪をたらしておくれ」
魔女が塔のてっぺん、
ひとつだけある窓に言うと、
中から長い長い姫の髪がたらされました。
それを隠れ見ていた王子は、
魔女がいないすきに
塔に近づき、
塔のてっぺんに向かって言ったのです。
「おお、ラプンツェル。お前のその美しく長い髪をたらしておくれ」
王子と姫は恋に落ちましたが、
魔女に見つかり、
王子は塔の下へ突き落とされ・・・
やがて・・・
✝塔内部✝
しばらくの沈黙。
気だるい。
指先で引き金の感触を確かめる。
「どうなったんだろ・・・僕の子供・・・」
ショック?
いや・・・
意外と平気?
じんわりとしみる。
実感が湧かない。
出てくるとこ、
見たかったのに・・・
知りたかった。
自分がどうやって〝生〟を受けたのか。
でも
もう・・・
いいか・・・
「君がこの森に来たのが分かって、私は少し・・・嬉しかった・・・」
僕は教授を見る。
「君の侵入を確認したあと、私は旦那に相談した・・・時が来たんじゃないかと」
僕は眉を寄せる。
「時?」
「私の旦那は解放されたがっている。娘が国に所有されることを嫌がっている」
「だから?」
「卵男は死にたがっている」
「だから?」
「女王の小姓は逃げたがっている。実際に今日、逃げ出した」
「・・・だから?」
「イカれ帽子屋の居候は弟の解放を思い、狼男はそれに協力したがっている」
「・・・だから何なの?」
「姫は国に保護されるだろう。イカれ帽子屋も」
「何をしたいの?」
「もうしている」
「電源を落として?」
「そう。卵男を放した。ヤツは女王の訪問を知っている筈だ。そして脱すれば女王を襲う」
「殺させるの?そんなに上手くいくかな?」
「旦那が女王に麻薬をもる」
「卵男のせいにして、自分たちは逃避行?」
「そうだ」
「はっ・・・」
思わずふてくされた笑いが出てきた。
「私は逃げないさ・・・そのためにここにいる」
「なぜ?」
「君は・・・私に復讐しに来たんじゃないのか?」
「ここに来たのは偶然だよ」
「しかし、現在の気持ちは?」
「・・・・・・」
僕は目を細める。
サディスティックな気分。
「僕の復讐を、受け入れてくれるって?」
「そうだ」
「なぜ?」
「罪悪感だ。私はずっと君達に・・・他の研究体達にも罪悪感を抱いて生きてきた・・・私の罪は君達によって罰せられるべきだ・・・」
「そうだね」
自分のものとは思えない、冷たい声だった。
「旦那さんはあなたの気持ちを知っているの?」
「好きにしろと言ってくれた」
「妻が殺されたい、と言っているのに?」
「彼は特殊な感覚で生きている。私には理解できないし、彼も理解されようとは思っていないようだ」
「素敵な関係だね」
半分皮肉
半分本気。
銃口を上げる。
撃つ。
命中。
教授が目を見開く。
コンピューターの電源スイッチだけを撃ち抜いた。
うなり。
塔全体が生きているような。
電源の再生。
「教授・・・僕は少し前に記憶が戻ってから・・・」
僕は銃口を見、弄う。
凶器の魅力にとりつかれたかのように。
「あなたの顔を見た時から、決めていたんです・・・」
狂気がゆっくりと浮上。
僕はいたって冷静だ。
「復讐しようと」
「そうか・・・」
「ええ・・・」
エレベーターが開く。
視線を横に流す。
一台のロボット。
なつかしく、憎らしい。
まだいたのか。
教授のお気に入り。
「ハァイ・・・テロル?」
テロルの目が僕をとらえる。
〈侵入者の解析―・・・解析終了。該当一件。全国指名手配犯。A級犯罪者。通称―〉
発砲。
命中。
放たれた弾丸は、テロルの額へ。
故障。
僕の心=ほのかな狂喜。
「通称、片目のテル」
僕は銃口の煙を吹き消すような仕草をした。
「伝説の狙撃手、ウイリアム・テルが由来だ。けっこういいでしょう?」
僕はここに来るまで、いろんな人間に会った。
人間じゃない生き物とも。
その度に事件に巻き込まれた。
まだ死にたくなくて
自分が誰なのか知りたくて、
戦った。
守った。
守ってもらった。
死んだ。
たくさん。
僕以外が・・・
それで
いつの間にか、指名手配犯。




