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九章・抱擁感 壱


 〈九章・抱擁感〉



 

 ねぇ、あなた。


 泣きそうなぐらい

 大好きよ・・・





 ✝隠れ家✝


 

 不安

 不安

 不安。


 不安な状態が安定している。


 怖いよ。

 寂しいよ。

 早く帰って来て・・・


 もう帰って来ないんじゃ・・・


 私が嫌いになったから?



 ひとの気配。

 ドアの向こう。


 私は立ち上がる。


 小走り。

 鍵が開く音。

 ドアが開く。


 私は慌てて冷静になる。

 立ち止まる。


 あなたが帰って来る。

 ドアの前に立っている私に、少し驚いた。


 鏡の前で何度も練習した笑顔を、あなたに捧げる。


「おかえりなさい」


 あなたの微笑。


「ただいま」


 それだけで私は、泣きたいぐらい安心できたの。


 家族の中でも、

 あなただけは

 特別だったから・・・


 あなた・・・


 あなた


 私の気持ち、伝わってる?


 理解してる?


 受け止めてくれているの・・・?


 私は毎日、毎日

 同じ疑問に悩まされる。



 いつから〝特別〟になったのか・・・

 最初から好きだったから

 分からないよ・・・



 初対面。

 私が生後1歳。

 あなたは2歳。

 幼少組で一緒だった。


 あなたは私を見て

 やさしい目をしてくれた。



 15歳。

 クナイ・ハイネトに入属。

 最年少。

 みんな私より優秀。

 

 焦り

 嫉妬

 努力

 挫折。


 先天性欠陥。

 気管支の脆弱。

 喘息。


 精神的脆弱性。


 兵士としての致命傷。


 『戦い』への

 『死』への恐怖。


 洗脳教育での、不洗脳。

 裏通称=染まらない白。


 上層部の確執。

 秘密の視聴覚室。

 幻想の密室。

 8人の特質。

 私は自信を喪失。


 みんな優しい。

 みんな素敵。


 相談すれば

 なぐさめてくれるって、

 分かってた・・・


 だからせめて

 これ以上、足手まといにはならないようにって・・・


 いつも

 いつも


 できるだけ、笑うことにしたの。  








 ✝海✝


 

 あの日の夜明け。

 

 変質した香り。

 潮風のこと。

 海のかおりだと知る。


 水色のノースリーブ。

 私の格好。

 肌寒い。


 ジッパーをおろす音。


 青いスカジャン。

 差し出すあなた。


「ん」


「え、でも・・・」


 頭に放られる。

 まだ体温が残っている。


「カッコつけやがって」

「うるさい」

「なにっ?」

「うるさいっ」


 防波堤の上。

 小突き合うふたり。

 あなたとユア・ヒタ。


「ありがとう・・・」


 ヒタに首を絞められているあなた。

 少し驚いて・・・

 苦笑に見える、はにかみ笑い。




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