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赤い糸【03】



「・・・カーリーは―・・・」



 忠実で

 従順で

 純粋で


 独立しているのに

 依存してた・・・


 もしくはそれが『恋』、なのか・・・


「その時テフがまだ生きていたのかどうか分からないけど・・・・・・きっと・・・張ってた糸が切れたみたいに、脱力したんじゃないかな・・・?」


 彼は

 確実に自分を殺した。


 意思を持って。


 自覚したまま。


 理性を残したまま。


 どこか正常で

 どこかが異常。


 その両方のあいまいな境目を、自分の意思で越えた。


 ケトゥとは異質。

 アナスに似ているかもしれない。


 似ているが、非なるもの。


 使命感?

 義務感?

 少し違う。


 虚無

 投げやり?


 適切な言葉が見つからない・・・。


 

 ケトゥは

 開け放った感じ。


 カーリーは・・・

 抱えた重荷を降ろした感じ。



「ケトゥの〝後追い〟だって聞いたけど・・・」



 本当に後を追ったつもりで

 死んだのだろうか?


 クナイが死んで

 ケトゥが死んで

 〝従順〟への相手がいなくなって

 〝調和〟を保つことができなくなったから


 死んだんじゃないのか・・・?



 僕は今、

 誰に聞いてるんだろう?


 自分に?


 僕は答えを持っていない・・・


 ・・・ただ・・・


 ケトゥの気持ちも

 カーリーの気持ちも

 少しだけ分かる。


 死にたくなる気持ちが。

 生きたくなくなる気持ちが。


 盛者必衰。

 栄えると同時に衰えるさま。

 栄える者はいずれは老いる。


 彼への気持ちのことではない。


 重荷とプライド。


 有限の空間で循環する、水を連想した。


「どういう手段で死んだのかは聞いていない・・・」


 

 カーリーらしい死にかた。


 飛び降り

 首吊り

 凍死

 爆死

 焼死

 溺死


 銃死。


 あの手紙を書いたあと、静かに自分の銃を見つめる、彼の幻影(すがた)が見える。


 敬礼に見える・・・。

 銃をこめかみに。

 引き金を引く。


 そんなイメージ。


「きっと・・・いさぎいい死に顔だったんじゃないかな・・・」


 久しぶりに、教授の質問。


「全員死んだのか?」


「いえ、キムは―・・・」


 フラッシュ・バック。

 甘い香り。

 メンバーの刺青。

 背中。

 振り返る。

 おぼろげな顔。


 生きろ。


「ここに来る前、隣街で会いました」

「隣街?」


「洞窟の抜け穴から滝壺に叩きつけられて、僕は・・・多分、二回目の記憶喪失に・・・」


「洞窟―・・・崖の上の?」


「さぁ?気づいたらだいぶ流されていたから・・・」


「川と滝壺がつながっているなら、『白蝙蝠の洞窟』か・・・」


「そう・・・ええ、そうだ。白蝙蝠に助けてもらって、ここまで来たんです」


「なるほど・・・それで生きて洞窟を抜けたうえ、道を間違えたのか」


 数秒の思考。

 内容の不理解。


「間違えた・・・?」


「あの洞窟は次元が歪んでいるんだ」

「次元?」

「つまり異世界への別れ道だ」


 再び、返答内容の不理解。

 許容量限度を超えている。


「異世界・・・?」


「あの蝙蝠の存在は、我々も把握している。しかし、何者であるかは不明だ」


「卵男のように、奇病に侵された人間である可能性は?」


「ゼロではない、としか言いようが無いな・・・」



 エッグ・シェルの絵画。

 題名:裏切り者。


 卵男と狼男、白蝙蝠の接触の証拠・・・



「彼は、言葉をおぼえたのは、人間のおかげだと」


「うちの娘か、旦那あたりだろう。異世界物には慣れているから」


 教授は、夕飯のメニューでも言うように言った。

  

「この森全体が、通常の次元とは切り離された異世界だ。本来、侵入者などありえない」


 言葉を失う。

 冷静を呼ぶ。

 脳内整理。

 疑問。


「・・・ヘルンだった頃から?」

「そうだ」

「みんな洞窟から出入りを?」


「いいや。次元と次元の行き来を可能とする種族がいる。国に雇われ、管理と鍵の役割を担っている」


「白蝙蝠みたいな?」


「いいや。魔法使い、とでも言えばイメージしやすいか?」


「魔法?」


 返答内容を繰り返すのは、不理解の証だ。


「彼らもまた、異世界の住人だが、少数はこちらの世界にいる」


「この世の理を操る者?」


「原子レベルでの空間の組み換えを可能とするらしいが・・・詳しいことは何一つ不明だ」


「じゃあ・・・僕たちがヘルンから脱出する時はどうやって・・・?」


「簡単さ。チェシャ猫、わたしの旦那が運転していたんだ」


「あの時・・・・・・チェシャ猫が・・・」

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