同調 02
✝姫の小城✝
金色の電話。
耳に当てるプリンセス・ローズ。
「あ。おばあちゃま?」
〈ハァイ、おばぁちゃまよ~ん〉
「あら、ミスター・ウルフマン。まだいたの・・・おばあちゃまは?お気に入りのハンカチを忘れて来てしまったのよ」
〈ああ。落ちてたよ。明日届けるよう言っておくわ〉
「ありがとう。おばあちゃまにかわって?」
〈今は具合が悪いんだ〉
「どうしてっ?すぐにお見舞いに行くわっっ」
〈女王様が来るんだろう?無理だ〉
「だって・・・」
〈明日来るといいわ〉
「分かったわ・・・何を持って行こうかしら?シェフのパン?外のワイン?」
〈一流もいいけど、要は気持ちでしょう?野生の花畑の花だって、気持ちがこもってれば嬉しいわ〉
「そうね。お花を持って行くわ。じゃあ」
〈ええ〉
姫は受話器を置く。
停電。
✝姫の小城:庭✝
「あの子はまだ見つからないのっ?」
テーブルを叩く扇子。
ガチャンッ・・・
こぼれる紅茶。
怯えるメイド達。
「失礼します。女王陛下」
近づいて来る人影。
チェシャ猫とアリス。
二人とも正装。
「ああ・・・チェシャ猫か・・・あの子は見つかったか?」
「いえ・・・」
チェシャ猫はアリスを示す。
「娘です。ゆくゆくは後を継がせるつもりですので、挨拶に」
「お会いできて光栄です、女王陛下」
スカートをつまんで挨拶するアリス。
女王は無視。
顔をそむける。
「おやおや・・・」
テーブルを見て、チェシャ猫は笑う。
「わたくしめが新しいお茶を入れて差し上げましょう」
チェシャ猫は胸ポケットから茶筒を取り出す。
「わたしの特別ブレンド。すぐにリラックスできる筈ですよ?」
茶筒が小気味よい音で開く。
それと同時に、停電。
✝イカれ帽子屋✝
バニー・ボーイの部屋。
電気をつけていなかったので、停電に気づかない。
ベッドに横たわっている、バニー・ボーイ。
心配そうな目。
ドアが開く。
ウルフマンの入室。
「遅いよ・・・」
「どっちが?」
「両方」
「大丈夫だよ。きっと話が盛り上がってるんだ」
「でも・・・もし捕まってたら・・・?」
「その時はその時よ。俺が命をかけて取り戻してあげる」
涙目のバニー。
赤い目。
「ウルフ・・・」
ウルフマンは心なしか目を細める。
苦しそうに目をつぶる。
思案。
苦悩。
覚悟。
「そんな目で見ないで・・・」
「なぜ?」
ウルフマンは目を開ける。
「狼はうさぎが大スキなんだよ・・・」
数秒、見つめ合う。
バニーの大きな瞳。
薄桃色の唇。
食べられたい衝動。
「ねぇ・・・ウルフ・・・」
バニーの白いほほに涙が伝う。
「狼が大スキなうさぎも、世の中にはいるんだよ・・・」
✝塔内部✝
荒い息。
せき込みながらも、塔の足元まで到着。
はやる心。
辺りを見渡す。
兵士はいない。
塔の入り口を探す。
どこにもない。
そんな筈はない。
どうやって入る?
入ったひとを見たことがない。
出て行くひとも。
本当は誰もいない?
そんな筈はない。
女装少年、プリンス・ページは塔の周りをうろつく。
まさかもう、どこかに行ってしまった・・・?
でも・・・
まだいたとしたら?
その場から動けなくなる。
一心異体の少年。
まるで精神が一卵性の双子のような小姓王子。
監視カメラを発見。
この時にはすでに、停電している・・・。
監視カメラが動いていないことも知らず、少年は茂みの中に隠れた。
―同調―
《森の管理人はアリスの母親、クナイの母親・・・姉妹は似ていたのかな?》
・・・・
・・・・
さぁ・・・?
《忘れてしまったの?》
・・・どういうこと?
それじゃあまるで、僕が物語りの内容を知っているようじゃないか。
《その通り》
え?
《君は知っているはずなんだよ》
何を・・・?
何を言ってるんだ?
だって物語は、オリジナルから送られてくるものだ。
《君の言う、オリジナルなんて存在しない》
え?
存在しない・・・?
《君が語る物語は、全てが君の記憶なのさ》
何を言っているの?
《これは君の物語だ。
君たちのね?》
ぼくたち?
ぼくたちって?
僕はずっと独りだ。
《そうなの?》
そうだよ。
《本当に?》
・・・・・・・・・?
《さぁ、記憶の扉を開く、魔法の鍵を拾いに行こうか・・・》




