五章・達成感
不思議の国かぁ。
僕の住んでる世界も、ある意味とっても不思議だよね。
《そうだね》
え?
・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・え?誰?
今のは何?
《ハァイ。ご機嫌いかが?》
君は誰っ?
《さぁ?》
茶化さないでよっ。
《そんなに驚かなくても・・・》
君は誰っ?
《誰だと思う?》
知らないよっ。
《忘れたの?》
・・・え?
《思い出して》
君は・・・・・・
・・・オリジナル?
《オリジナル?》
僕の?
《違うよ》
じゃあ・・・・
誰?
《思い出して》
誰なの?
《物語を進めよう》
ねぇっ・・・
〈五章・達成感〉
加速。
加速・・・
追いつめられている実感。
危機感。
高揚。
興奮。
うしろを振り返る。
「テフッ」
遅れるテフ。
マイ・ヒタ。
「ごめんっっ」
みんなで走る。
隠れ家が見つかった。
みんなで走る。
8人みんなで。
歴史ある街。
モザイク柄の地面。
街灯。
暗い、暗い、夜道。
みんなの息づかいを把握。
足音も。
最小限の荷物が揺れる音・・・
風が冷えてる。
クリーム色のセーター。
追っ手の気配。
発砲。
攻撃。
追撃。
テフの足を弾丸がえぐる。
街灯の下で血が飛沫く。
重なる声。
「『テフッ』」
テフの腕を引く。
角を曲がる。
バトン。
ケトゥがテフを引っ張る。
前に押す。
カーリーが背負う。
「ごめんっ・・・」
泣きそうなテフ。
「泣いている暇はない」
兵士の鏡=カーリー。
わたしの憧れ。
追っ手の気配。
「次の角を曲がるっ」
リーダーの指令。
「弾はっ?」
ケトゥの確認。
「残り少ないっ」
「こっちもっ」
仲良しヒタ=あだ名。
少年兵士、ふたり。
銃のマガジンを確認。
「あと三発っ」
とキム。
リーダー・クナイの苦悶。
上がる息。
圧倒的に不利。
戦場での掟。
〝助からない者は助けるな〟。
テフの生き残りの計算。
切り捨てた時の団体の利益の計算。
おそらく全員が計算し終えている。
「置いてってっ」
テフの叫び。
不利益の自覚。
罪悪感。
「ダメだ」
リーダー。
テフを見る。
「我々はもう兵士じゃない。仲間は見捨てない。それがわたしの意見だ」
「右に同じ」
リーダーの左にいるケトゥ。
うなずくカーリー。
そのヒタ=キムも。
「俺も」
「僕も」
仲良しヒタ。
「わたしもだっ」
わたし=テフのヒタ。
「みんな・・・」
テフの涙声。
角を曲がる。
仲良しヒタの片割れ。
黒髪少年。
「しかし、どうする?リーダー?」
「逃げるさ」
みんなで走る。
スリリング。
みんなで走る。
死にそうなくらい。
みんなで走る。
生きてる実感。
みんなで走る。
わたしは止まる。
「ごめん、みんなっっ」
振り返るみんな。
引き返すわたし。
「バカッ」
仲良しヒタの片割れ。
金髪少年。
「戻れっ、アナスッッ」
クナイの叫び。
曲がり角に戻る。
加速。
足。
鼓動。
感情。
追っ手。
銃撃。
負傷。
敵=5人。
最後の切り札。
手榴弾。
口でピンを抜く。
「『アナスッッ』」
みんなの声。
笑えてくる。
嬉しい。
爽快感。
生まれてきた理由。
存在理由。
役に立ちたかった。
兵士じゃない、自分・・・。
回ってきた役割。
使命感。
願望。
高揚。
虚無感?
対比する何か、満ちた足りた気分。
撃たれる。
建設的思考。
対比する何か。
本能?
意思。
願望。
渇望。
戦いへの。
投げる。
白く歪む世界。
赤く弾ける世界。
全てを飲み込む黒い世界。
攻撃。
破裂。
飛散。
わたしと敵。
敵のひとりに飛びついた。
自爆。
自己満足?
満足。
それが・・・
〝わたし〟の意志。
「アナスッッ」
最後に聞いたのは、マイ・ヒタの、叫び声だった・・・。
あの頃のわたし達は、
みんなで生きてたよね。
死にそうなぐらい、懸命に。
あの時のわたしは、死にたかったんじゃない。
とてもきらめいて、生きてたんだよ・・・。
―五章・達成感―




