a pege
〈a pege 〉
薄暗い部屋。
開かれた窓。
淡く満ちるひなた。
庭先の風。
ガタン・・・
訪問者の気配。
金髪の少年は窓を見る。
「ハァイ」
窓を乗り越えてくる男。
ウルフマン。
花束を持っている。
「何よ。心配してたのに。無事に来てるじゃない」
ベッドで眠っている、バニー・ボーイ。
看病している義理の弟。
小姓王子。
「具合はどう?」
「眠ってるだけ」
「そう・・・」
ウルフマンはバニーの寝顔をのぞきこんだ。
ふと、微笑。
やさしい目。
それを見る、少年の無表情な目。
視線が合う。
「なぜ逃げた?」
「気づいたら・・・馬車から飛び降りてた・・・」
ウルフマンのため息。
「どうしたもんかねぇ」
「見つかったら・・・」
「かくまう方が重罪よ。あなたは彼女のお気に入りだから―・・・」
「殺してなんかくれないよ」
花をいけるウルフマン。
少年を思わせる部屋に、彩り。
「・・・・・・あなたには死んでもらわないと困るのよ」
「・・・・・・・・・ここで?」
「まさか。森でだよ。君は行方不明のまま、森でのたれ死にましたとさ」
ウルフマンはホール・ケーキ型の帽子をかぶった。
「めでたし、めでたし♪」
プリンス・ページを見る。
「ほとぼりが冷めるまで隠れてなさい」
「いつか見つかっちゃうよ」
「彼女の所に戻りたい?」
「絶対にイヤだ」
「じゃあいなさい・・・」
「・・・分かった」
「あと、着替えも。それじゃ目立つわ。女装して」
「・・・うん」
プリンス・ページはクローゼットを開ける。
並ぶモノトーン。
適当に見つくろう。
着替え。
ウルフマンは化粧の準備。
小さなテーブルに小物が並べられる。
「兵士はここまで来るかな?」
「そうね。いずれは」
「・・・・・・うん・・・」
服が床に落ちる。
鏡に少年の背中。
ウルフマンは顔をしかめる。
思わず振り返る。
「その傷は?」
「・・・・・・彼女はヒステリック」
ウルフマンは複雑そうに
しかし雰囲気を茶化す方法を考える。
彼の特技。
自己防衛法。
「きっと・・・ハートの女王の心臓は動いてないのね」
「貧血おこしても、彼女のは飲まない方がいいよ」
「冷血だから?」
着替えが終わる。
プリンス・ページが振り返る。
「服は捨てるの?」
「森にね」
鏡の前に座る少年。
ウルフマンは長い黒髪のかつらを少年にかぶせた。
「この髪邪魔だよ。いざって時に逃げられない」
「じゃあ三つ編みにしなさいよ。可愛いし、武器にもなるわ」
「武器?」
「物は使いようよ」
ウルフマンは少年に化粧を始める。
なめらかな肌をくすぐるハケ・・・。
「そう言えばあの時・・・」
「あの時?」
「隠れてたでしょ?しげみに」
「やだ。バレてたの?」
「誰が隣にいたの?」
「旅人よ。記憶喪失なんですって」
貝殻に入った紅を取り出す。
少年の唇が赤く塗られる。
「ン~~~~パッ」
ウルフマンは唇をすぼめ、大げさに鳴らす。
「・・・姉さんにやれば?」
「バカね。投げキッスじゃないわよ。口紅をなじませるの」
「ああ・・・」
少年は唇で唇をはむ。
女装 完了。
鏡をのぞく少年。
「プリンセスに少し似てる・・・」
「お小姓は新たな本の白紙のページを開きました」
「本のページ?どんな物語の?」
「これからはあなたの、よ」
少年は沈黙。
思考の気配。
本物の人形のよう。
「ねぇ・・・あのひと、さ・・・一緒にいたひと」
「うん?」
「名前なんて言うの?」
「さぁ?アイビー、アリス、ひしゃげ帽さん・・・」
「ひしゃげ帽?」
「そ。片目が隠れるようになってる帽子、かぶってるのよ」
少年は立ち上がる。
勢いでイスが倒れる。
それでも無表情。
「目が悪いの?片目だけ?」
「さぁ?」
「・・・・・・・」
数秒の沈黙。
「・・・・・・・あの顔・・・」
ベッド脇のぬいぐるみが床に落ちた。
二足歩行で走る。
女装少年が側にあったバスケットにつめる。
ドアを開け放ち、走って行く。
呆然とするウルフマン。
「何だ・・・今の・・・?」
「・・・なんでとめないんだ・・・」
ウルフマンはベッドを見る。
バニー・ボーイの目覚めを知る。
ゆったりとしたパジャマを着ている。
部屋にふたりきり。
平然を装う。
「追いましょうか?」
「余計に不審がられるよ」
ウルフマンはベッドの脇に座る。
「あの旅人は何なのかしら?」
バニー・ボーイの遠い目。
視線の移動。
ウルフマンと目が合う。
「どうして彼をお茶に招待したか・・・分かる?」
数秒の思案。
狼男は目を細めた。
「噛み付けば分かるかもよ?」
バニーの苦笑。
「双子だと思えばいいよね・・・?」
「うん?」
困惑するウルフマン。
「僕の王子が、さ」
バニーは天井を見る。
首のネックレスに触れる。
「・・・同じ立場だったら、僕だって会いに行きたくなるだろうな・・・」
「・・・・・・」
心配そうなウルフマン。
バニーの額に手を当てる。
「どういうこと?」
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