ハンプティ・ダンプティ 【01】
〈ハンプティ・ダンプティ〉
植物園の中を散歩。
なるべく冷静に。
ゆっくりと歩く。
今すぐ逃げ出したい気分。
(どこへ?)
今すぐ閉じこもりたい気分。
(どこへ?)
今すぐ帰りたい気分。
(どこへ?)
『Heaven Corin Hell』
僕らの家。
僕らの楽園。
いつわりの楽園。
天国と地獄が
乳化した場所。
天国でも、
地獄でもない場所。
大きな葉が体をかすめる。
わたしを食べて?
甘い蜜をえさに、淫らにつぼみを広げる花たち。
植物の間にキャンパス。
ウルフマンの作品?
もしくは―・・・
題名:惑星
赤紫色に発光する宇宙。
フラッシュ・バック。
四角い宇宙。
複数の人影。
顔は見えない。
先に進む。
題名:裏切り
白い背中に広がる、白いコウモリ羽。
フラッシュ・バック。
走ってっっ。
―誘われるように歩く。
題名:私の聖母
窓からの逆光。
ふくれた腹をさすっている美女。
フラッシュ・バック。
すらりとした体。
長い黒髪の巻き毛。
笑った気配。
顔が分からない。
進む。
題名:牢獄
夕暮れの空に、城のシルエット。
題名:欲望
ぶちまけられた赤い絵の具。
まるで血のよう。
フラッシュ・バック。
ドンッ
・・・・・・
・・・・・・・・・・
心臓が、締め付けられるように苦しくなる。
柱と天井格子にからむツル草。
緑の箱をイメージ。
頭上から垂れる花。
甘い香り。
その手前に、銀色のキャンパス。
クモの巣を描いたような、叩き割られた鏡。
題名:君は誰?
そこには、
歪んだ僕の姿・・・。
めまい。
同族嫌悪。
あこがれ?
誰に?
〝開きそうな〟僕。
その対比。
自らを閉じ込める、ハンプティ・・・・
僕は息をのんだ。
咄嗟に銃を引き抜き、彼に銃口を向けている。
鏡の裏。
花のカーテンの下。
黒髪の青年。
黒づくめの服。
同じ目線。
美しい顔。
無表情。
動揺した様子=皆無。
フラッシュ・バック。
マイ・ヒタ。
めまい。
めまい。
めまい。
めまい。
めまい。
めまい。
無愛想な、義務的な質問。
「気分が悪いのかね?」
「・・・・・・あなたは?」
「さっき会ったろう?」
・・・・・・?
「誰ですか」
「ロンリー・ウルフ、卵男、吸血鬼、化け物・・・好きに呼んでくれ」
年齢を自由に操る能力・・・?
まさか・・・
ウルフマンが言っていたことは―・・・
「そんなものを向けても無駄だ。降ろしたまえよ」
美青年は折りたたみナイフを取り出した。
警戒=無意味。
その予感。
彼はナイフの刃を握った。
手の中から、スーっと引き抜く。
滴り落ちる血。
平然としている男。
こちらに向けて手を開く。
軽い挨拶風に。
赤い手。
数秒をかけてふさがていく傷・・・。
寒気。
「異常治癒能力・・・」
「だからソレは意味がない」




