卵男
〈卵男〉
ゆらゆら
ゆらゆら・・・
樹の上のゆりかご
その中にいる気分
ゆらゆら
ゆらゆら・・・
赤ん坊の頃の思い出・・・
ゆらゆら
ゆらゆら・・・
Fiah back
ゆりかごのせた
樹のえだ折れた
「・・・ウルフマン?」
ウルフマンの背中。
おぶられている僕。
何百段もありそうな階段。
病人のはずの、ウルフマン・・・
「気分はどう?アイビー?」
一瞬困惑。
認識。
理解。
アイビー=僕。
「僕は・・・」
「倒れちゃったのよ~」
そうだ。
あの少年を見た途端、すさまじい量の情報が―・・・
しかし・・・
内容は忘れてしまった・・・。
「・・・ごめん」
「気にしないで~」
まだ少し、テンションのおかしい狼男。
階段の終わりが近い。
「もう着くよ」
きれいに舗装された階段を上がりきると、急激に視界が開ける。
「ありがと」
ウルフマンの背中から降りる。
「意外と力持ちだね?」
「別に病弱ってわけじゃないのよ?ひとよりちょっと血が足りないだ・け♪」
ウルフマンは鼻歌を歌いながら、均された灰白色のブロックタイルの地面を歩いてゆく。
ガラガラ ガラガラ・・・
ほぼ空の血液パックをぶらさげた、金属製の医療用コート掛け、的なもの。
名前は分からないが・・・
ウルフマンはどうやって階段を上がったのだろう?
目の前に広がる、円形の広場。
周りは森。
小高い丘のてっぺんを削って均し、造られたらしい。
広場の真ん中に透明なドーム。
総ガラス張り。
緑の皿に乗せられた、巨大な目玉焼きを連想。
内側から流れる水。
緑の陰。
「植物園?」
「兼、俺の家」
「ひとりで?」
「シングルじゃないけど、ロンリーなの」
ウルフマンは目玉焼きの黄身の部分、ドームに案内してくれた。
内側を流れる水のせいで、室内の様子は見えない。
暗証番号の確認。
指紋確認。
音声確認。
網膜確認。
頭上には監視カメラ。
民家にしては厳重なセキュリティ。
「あ・け・て♪お客さんだよ」
〈誰だい、その方は?〉
「んふふ。友達?」
いつからだろう?
〈お気の毒に〉
まったくです。
ガラスの一部がスライドして、内部への通路を開く。
そこだけ人工の滝が落ちてこないようになっている。
出入り口をくぐる。
デジャ・ヴュ?
疑問は崩れて、すぐに泡と消えた・・・・。
生活感の欠如。
清潔、清浄、整然、それと同時に雑多。
さまざまな種類の、大量の植物。
「さっきのひとは?」
「俺の祖先」
「うん?」
シダ、ハイビスカス、鬼火花、小さい藤と、ゴールデン・シャワー。
貴婦人の巨大まつげ風の葉。
「おじいちゃんよ」
赤いしきみ、老紳士の杖をねじったようなもの。
「若い声だったよ」
「そ。若作りで童顔よ」
海草もどき、どう見てもコケの鉢。
リスリムリルリラとマンドラゴラリス・・・
「あれは何て名前?」
鉢からはえた、二重螺旋の絡み合う茎。
枝が互いに刺さっているように見える作りだ。
「遺伝子配列模造花」
「花が咲くの?」
「年に一回、二本の茎からツガイが咲く。一方がオクキ、もう一方がメクキ。子育ては両方なの」
狼男は両手で作った〝つぼみ〟の先を小突かせる。
「チュ、チュ、チュッ」
とキスのまねごと。
僕を見て、イタズラっぽい笑み。
「彼らの交配と開花はラブリーでセクシーだ」
建物の中心付近=居住スペース。
ホテルの一室を備えた雰囲気。
ドームの中心に大樹。
連想=青年のはりと老人の威厳、少年のみずみずしさと女性の母性。
幹の一部は加工され、棚に。
並んでいる植物学の本。
ウルフマンは幹の側で手招きをする。
いつの間にか輸血を終えて、見た目がすっきりとしている。
近づく。
エレベーターだ。
促される。
中に入る。
筒のイメージ。
ウルフマンがボタンを押す。
「上へまいりま~す」
上昇。
数秒の浮遊感。
箱が床からせり上がる。
中から二人の人影。
「ハァイ、グランパ」
「・・・珍しいな・・・」
「ここまで来るのが?客人が?」
「両方だ」
高い声。
若い声。
対応していたマイク越しの声とは違う。
僕は困惑。
円形の中の半球。
一面の棚と本。
水槽と熱帯魚。
ぬいぐるみ。
飛行機や戦闘機の模型。
重役めいた木製デスク。
座っているのは、幼児・・・
ウルフマンの紹介。
幼児を示す。
「ハンプティ・ダンプティ。通称〝卵男〟。俺のグランパ」
「・・・・・・・・・・・・グランパ?」
「正確には何代か前の、ね」
幼児を観察。
幼児も僕を観察。
大人びた口調。
「私が本を読んでいる間に、一体どれぐらいがたった?」
「さぁ?」
肩をすくめる狼男。
「彼はアイビー。具合悪いみたいだから、しばらくいさせるよ?」
「塔に行けばいい」
「行けないからここでかくまうんだよ」
「かくまう?」
幼児の眉間にシワ。
「記憶喪失だって。今日は女王の訪問日だからね。不審者いると、ヤッカイじゃない?」
「バレたらギロチンの刑だぞ」
「今はそんな刑ないわよ。せいぜい縛り首」
「結果はかわらない」
「かわるわよ。俺の素敵なお顔が離れたら、体が悲しむだろ?」
「意味不明だ」
「それより、頭痛に効く薬、調合してよ」
「自分でやれ」
「やっていいの?」
ウルフマンはにっと笑う。
僕の方へと振り向いた。
「行こ♪」
エレベーターへ。
続く困惑。
沈殿感。
下へ向かう。
「―・・・信じる?」
ウルフマンの横顔。
「・・・・・・何を?」
「彼は不老半不死。二百五十年以上、生きてる・・・」
―卵男―
・・・・・・・・・おぉ・・・
何か
想像してなかった
展開だね。
続き、どうなるんだろう・・・?




