ワー・ウルフ
〈ワー・ウルフ〉
イカれ帽子屋の
お茶会。
イカれたお茶会。
〝バニー〟はテーブルに飾れたスミレの花の位置を、指先で整えた。
「記憶喪失か・・・」
ウルフマンのつぶやき。
ショートケーキのイチゴだけをつまみ、口にほうる。
「ウルフ、行儀悪いぞ」
バニーの不機嫌。
本気ではない。
肩をすくめるウルフマン。
「ソーリィ~」
悪びれた様子、ゼロ。
こちらを見る。
「ここのイチゴは美味しいんだよ。メイド・イン・ミィ」
「君?」
「そ。ここの土は質がいい。極端に栄養がある所と、ない所の差があってね。その環境に応じた植物が豊富に育っている」
畑を見る。
モンスター・ブロッコリー。
あれならお腹いっぱい食べられるだろうが、
ブロッコリーをお腹いっぱい食べたいとは思えないところが難点だ。
テーブルの上の本。
「君は植物が好きなんだね?」
「ふふ。植物学者の卵さ」
「研究のためにここに?」
「何の?」
「植物の」
「〝俺〟のかも?」
「そうなの?」
「さぁ?・・・どっちだと思う?」
彼を観察。
青と赤のイメージ。
「・・・どっちも?」
ウルフマンの笑い。
「正解」
ウルフマンは上着のポケットから細い葉巻めいたものを取り出した。
骸骨と薔薇柄のシルバー・ライターで火をつけ、
甘い香りの煙を吐き出す。
妖艶なかおり。
魔性の魅力を秘めたかおり。
「いかが?」
ウルフマンからのすすめ。
直感。
「〝悪い〟ものが入ってるね?」
「まさか。〝極上の夢〟と〝幻〟しか入ってないわ」
「空も飛べるって?」
「宇宙でナンパ♪」
「あいにく地球人にしか興味ないんでね。やめとくよ」
「あら・・・残念。おもてなしのつもりだったんだけど・・・」
ウルフマンはいじっていたライターをポケットに。
「君は体が悪いんじゃないのかい?」
「なぜ?」
「タバコ吸うから悪いんだよ」
バニーのいやみ。
どうやらタバコの類が嫌いらしい。
ウルフマンと僕の苦笑。
同時に。
『たしかに』
お茶を飲む。
僕はウルフマンに質問。
「医者に止められないの?」
ウルフマンは自分の片腕につながった、血液パックを指で軽く弾いた。
「止めないわね。新鮮な野菜と茶葉が代金だもの」
いやらしい、とも言える手つきでチューブを弄う。
ウルフマンは僕が訪ねて来た時から、輸血している。
キャスター付きのコート掛けみたいなものにぶら下がった、血液パックだ。
チューブを通る赤。
血管を連想。
「持病が?」
「貧血。定期的に輸血しないと、大変なことになるの」
「人を襲う、とか?」
「え?どういう意味で?」
「エロい意味で?」
ジョーク。
苦笑の獲得。
「じゃあ、血を吸う、とか?」
「それじゃあヴァンパイアでしょ」
「〝ウルフマン〟の由来、分かる?」
「月に吠える?」
「そりゃあ、ひとりの夜は吠えたい日もあるわよねぇ」
微笑。
「じゃあ、色男?」
「とっても正解」
バニーはカップの中に輪切りのレモンを浮かべた。
「女じゃないのに、月の動きに左右される」
「・・・それが由来?男も左右されると思うけど・・・」
「貧血は女に多いからね」
「それに俺は、狼の遺伝子を受け継いでる」
「狼?」
「そう、狼」
―ワー・ウルフ―




