二章・罪悪感
〈二章・罪悪感〉
☨数日後☨
自室。
ヒタ一組、一部屋のわりあて。
ベッドに横になり、マニュアル本を読んでいる僕。
「俺、レベルが上がってるぜ」
イスに座っている、僕のヒタ。
身体測定結果のことだ。
僕はクッションを投げる。
ヒタが顔の前で受け取る。
「たかが2センチ身体が伸びたぐらいで自慢するなよ」
クッションが返って来る。
「さては、お前くやしがってるな?」
クッションを投げる。
ヒタが受け取る。
「まさか。栄養補給を調節すれば、すぐに追いつくレベルだ」
ヒタがクッションを投げ返す。
それと同時、部屋に取り付けられたスピーカーから、〝教授〟の声がした。
《第十四部隊、クナイ・ハイネトに告ぐ》
クッションを取りそこね、僕の顔に直撃。
《クナイ・ハイネトに告ぐ。これは極秘通信だ。君たちの初任務が決定した》
僕はヒタに遅れ、スピーカーに振り向いた。
《明日、午前一時きっかり、クナイ・ハイネトは自室を脱すること。これは訓練ではない。クナイ・ハイネトは午前一時十分までに、地上一階、運搬室まですみやかに集合するように。食料運搬車に乗り込んだのち、午前一時十一分、出発。くわしい作戦内容は車内でおこなう》
呆然。
《繰り返す。第十四部隊クナイ・ハイネトに告ぐ・・・》
僕たちは顔を見合わせた。
「聞いたか・・・?」
「ああ・・・」
僕はクッションを放り投げ、がばりと起き上がった。
「初任務だっ」
僕とヒタはハイタッチをした。
「初任務だっっ」
顔を突き合わせ、笑いあう。
あの頃の僕たちは、
無垢で純粋で、
残酷だった・・・
〝従順な兵士〟
それ以外の存在理由を与えられなかった僕たちは、
僕たちの知っている世界が、
すべて
だと、思っていた・・・。
☨自由時間☨
僕とヒタは、クナイ・ハイネトの秘密基地、『視聴覚室』に向かった。
入り口のコンピューターに鍵をかざすと、ドアがスライド。
「やっと来たか」
キムの声。
数人の気配。
中は暗い。
ドアが自動で閉まる。
闇の中に小さな光。
回転する光点。
星空の箱。
部屋の六面が、電子画面。
一番先に来た者が、映像の選択権を得る。
クナイ・ハイネトの暗黙ルール。
今日は宇宙。
崩壊した月を踏みながら、僕たちは部屋を進む。
「一番乗りはケトゥ?」
「正解」
ケトゥ=生後十九年。
冷静沈着。
精神安定のためにだてメガネ使用。
「二番目は私」
クナイ=生後十九年。
気配り屋。
今日も白いワンピース。
透明なプラスチックのイスに座る。
少し離れた隣、いつもの場所にマイ・ヒタ。
「聞いた?」
「もちろん」
「初任務だ」
キム=生後十八年。
しなやかな体つき。
片ヒザを立てて座るのが癖。
「さっきからその話ばっかりだ」
カーリー=生後二十年。
軍人っぽい体つき。
真っ赤な髪。
「何するんだろう?」
テフ=生後十五年。
ハイネト最年少。
発育がよく、二十代に見える。
「潜入捜査?」
アナス=生後十七年。
ボーイッシュ。
短髪。
「何のだよ」
マイ・ヒタ=生後十六年。
発育途中の体つき。
ウキウキしている。
僕=あと二日で、生後十六年。
ヒタの身長を超えるのが目標。
ワクワクしている。
「何でもいいよ。早く戦いたい」
宇宙の中で雑談。
みなが興奮をおさえている。
隠しきれていない。
誰も気にしない。
が、
気になるのは・・・
クナイ。
今日は特に無口だ。
「ケトゥ」
自由時間終了時間。
部屋を出て行くみんな。
ケトゥの背中に声をかける。
振り向くケトゥ。
「クナイ・・・様子がおかしくなかった?」
「初任務だ。緊張しているんだろう」
「・・・そうかな・・・」
「ああ」
「・・・・・・うん」
「じゃあ、運搬室で」
ケトゥは再び、僕に背中を向けた。
いつもと変わらない、そっけない態度だった・・・。
あの頃の僕たちは、
みんな一緒で、
みんな違った。
みんな違うことに気づいたら、
もう・・・
元には戻れない。
―二章・罪悪感―




