最終 final mission 作戦
〈最終 final mission 作戦〉
僕たちは闇の中にいて、
僕たちはみんな一緒で、
僕たちはみんな・・・
孤独だった・・・
「今から君たちはパートナーだ」
そう言って〝教授〟が紹介したのは、黒髪の少年。
同じ、生後十五年。
彼の方が76時間18分ほど、年上だと言う。
顔の作りは人種が違うのでしかたないが、僕たちの背丈や体格はよく似ていた。
僕たちはその日、対=ヒタになった。
「よろしくな」
「よろしく、マイ・ヒタ」
その頃の僕たちは互いが似ていることを知っていて、
互いがどんなに大切な存在なのか、
気づきもしなかった・・・。
ヒタはお互いに、相手のことを
「わたしのヒタ」
と呼ぶ。
基本的にヒタは似たもの同士、そうでなければ対極のタイプが組まされる。
対術系のカーリーとキム。
情報部員のアナスとテフ。
万能順応系=僕と僕のヒタ。
ヒタを四組、ひとグループにしたものがハイネト。
ハイネトのリーダーがクナイ。
副リーダー、ケトゥ。
他にもいくつかのハイネトがあって、リーダーの名前を頭に付けて区別する。
クナイ・ハイネト。
僕の擬似家族だ。
僕らは生まれた時からここ、ヘルンにいる。
試験的実地訓練以外、まだ外に出してもらったことがない。
年上のハイネトたちはもう、実戦にも行っているのに・・・。
☨廊下☨
ちり一つ・・・いや。ほこり一つ落ちていない、真っ白な廊下。
片面はガラス張りで、日光が溢れんばかりに差している。
庭園をまぶしそうに見つめているクナイを発見。
近づく。
視線が合う。
彼女が微笑む。
好意的な証拠。
「どうしたの?」
「いや、何してるのかな、って」
壁によりかかる。
ガラスの手前にいる彼女の姿は、逆光。
「君は〝神〟を信じる?」
突然の質問に絶句。
「どういう意味?」
「この前さ、作戦に失敗して死んだヤツ、いたでしょ?」
「トリアナ・ハイネトか・・・・・・それが?」
「彼らは途中からここに来ただろう?だから私達とは多少、価値観が違う。彼らは実戦を経験した、本物の兵士達だった・・・・」
「・・・それで?」
「病棟に見舞いに行ったんだ。彼らが死ぬ前に」
「そうなの?」
彼女はうなずく。
「もちなおしている時、”教授”が特別にね・・・みんな眠ってたけど・・・トリアナがうなされながら言ったんだ。『おお、神よ・・・許したまえ・・・』って・・・」
「あのトリアナが?」
「そう、あのトリアナが」
「その考えは・・・危険だ・・・」
クナイ・ハイネトは全員、あらゆる信仰を禁止されている。
唯一、司令塔が神のごとく命令を下す時にだけ、僕らはなんらかの信者になる。
〝戦い〟というものの、信者に。
「ここではそう言われている・・・」
「・・・どういう意味?」
「もしかすると、〝ここ〟じゃない、どこかでは・・・・」
「クナイ」
相手の名を呼ぶことでの、会話中断要求。
危機回避行動。
姿勢も表情もそのまま、声をひそめる。
「どこに『耳』がついているのか分からない」
「分かっている。自我の主張、他人への干渉は基本的に禁止・・・しかし、思考を止めることができない。私達は・・・いったい、何のために生まれたのか・・・」
「戦うためだ」
「外には何があるのか」
「〝戦い〟さ」
彼女が僕の目を見る。
逆光で表情が見えにくい。
「本当にそれだけか?」
「あざむき、計算、投資、回収」
彼女の、困ったような、苦しんでいるような、僕を少し責めているような顔。
「本当にそれだけか?」
「・・・何と言って欲しいの?」
彼女の周りが輝いている。
「私も君もヘルンの所有物だ。しかし、〝なぜヘルンの所有物なのか〟と考える私の思考も、ヘルンの所有物なのだろうか?」
「君の思考は君の所有物だと?」
「・・・分からない・・・」
クナイは視線を落とす。
「私は・・・〝答え〟が欲しいんだ」
「どの質問に対して?」
「〝すべて〟のだ」
「コンピューターで検索してみれば?研究員達に感知されるとマズいけど・・・小細工してあげようか?」
クナイは苦しいそうにかぶりをふる。
「そこに答えはない」
「検索したの?」
「した。しなくても分かる」
「なぜ?」
「〝ここ〟に、私が欲している答えがないことは・・・理解している」
「じゃあ・・・どこに・・・?」
彼女は目を細める。
髪が透けて蜜色に見える。
後光を放つ女神みたいな光景。
ゆれる髪先が、
体のりんかくが、
彼女の細い腕が、
曲線を描く腰が・・・まるで僕を呼んでいるかのよう。
目が痛い。
目がくらむ。
目が離せない・・・。
彼女は言う。
「君から生まれたその疑問は、その意思と自我は、ヘルンの所有物か・・・?」
「・・・」
僕はうすく口を開いた。
「・・・」
言葉をつむごうとして、中止。
正確には、思考の中断。
もしくは停止。
教科書にはない質問だったので、僕の中に対応文章が存在しなかった・・・。
あの頃の僕は、彼女が〝答え〟を求める理由も、
この違和感の理由も、
彼女に対する特別な気持ちの名前も、
理解していなかった。
―一章・違和感―
ん?区切りかたが違う・・・?




