自己紹介
君と僕はどこで出会ったんだろう?
君は『前の君』で、まだ僕を大切にしてくれているのかな。
それとも僕は古本屋という所に売られて、
新しい君が買ってくれたの?
それともまだ、立ち読みの段階?
よかったら僕をそばにおいてもらえないかな?
・・・ダメ?
僕の言葉、通じてる?
まさか外国じゃないよね、ここ?
図書館という場所の棚にならんでいるのかな?
道端に捨てられていたのをひろってくれたの?
僕の見た目はどうなっているんだろう?
君が手に取ってくれた、ってことは、魅力的なのかな?
それとも日焼けしてボロボロになって薄汚れてる?
それでもうれしいよ。
ありがとう。
僕は目が見えないから、
僕が今ドコにいるのか分からないんだ。
君のヒザの上かもしれないし、床の上かもしれないし、机の上かもしれないし・・・
あ。
「目が見えない」と言っても、本当に目があるわけじゃないよ?
あくまでも比喩。
僕には口もないし、手もないし・・・早い話が、物質的な体を持ち合わせていないってこと。
ただ、意識と自我は持っている。
君がいま読んでいるこの文字は、
僕が自分の意思で書いていて、
そしてこの文字自体が、
僕の手足や口のかわりをしてくれている。
君が触れたこの紙が僕の皮膚であり、感触でもある・・・
『きみ』がこどもなら、
ムズカシイことを言っているのかもしれないね。
でももし 『君』がこどもじゃなくて、
読書が好きな人間ならば・・・
もう気づいたかな?
自己紹介をしよう。
僕は『本』だ。
そしてこの本が、『僕』だ。




