目覚め
ああっ。ありがとう。開いてくれたんだね。
うれしいよ。
こんなこといつぶりだろう?
それとも君は・・・やっぱり前の君なのか?
あの時の?
・・・はは。
『あの時』と言ったって、僕には正確な時間の変化がわからない。
もしかしたらさっきの君がすぐに戻って来てくれたのかもしれないし、
君は別の君なのかもしれない。
新しいひとなのかな?
君は何歳?精神年齢は?
女?男?それとも両方?どちらでもない?
僕は・・・何歳なんだろう?
まぁ、いいや・・・
君が答えてくれたって、僕に聞こえるわけじゃないし。
僕は君が誰なのか分からないし、もし名前を知ることができても、意味がない。
だから僕は、君を『君』と呼ぶしかないんだ。
ここが何時代で、
どんな言葉が差別になっているか分からないけど、
『君』という単語は大丈夫かな?
不快じゃない?
もし不快なら、もう、この本を閉じたほうがいい。
でも、そうじゃないなら・・・
もう少しだけ・・・
読んでくれないか?
読んでもらうのが僕の唯一の幸せで楽しみなんだ。
君が僕を見つめている時にだけ、君の存在を感じていられるから・・・
この気持ちは恋にも似ているけど、僕には「性別」がない。
性別がないから恋ができないのか、
というと、
そうじゃないのかもしれないけど・・・
うん・・・
僕はずっと君を待っていたのかもしれない。
待っている間にあるのは『君』への想いだけだ。
君の感触を思い出そうとするけど、
もう・・・遠い遠い・・・昔のようで・・・
もし君が僕を手に取るのがはじめてなら、何を言っているのか分からないよね。
気にしないで?
でも・・・
気にしてほしい。