階段 01
〈階段〉
電車を見送ったあとだった。
駅のホームの向かい側に立っている男のひとが、ふと、目に入った。
〝ああ、先輩に似てる・・・〟
三つ上の、学校の先輩。
すでに卒業して、もう校内で見かけることはなくなった。
早々と結婚して、来年には子供が生まれるらしい。
噂になっていた美女とではなく、私の知らない誰かとだった・・・。
もう一度先輩似のひとを見ようと顔を見上げた時、ホームに電車が到着した。
黒っぽい服を着た男の人影が見えた瞬間、視界が遮られる。
今日は祭りがあるらしいので、向こうの車内は混雑しているようだ。
電車が出ると、先輩似の彼はもういなかった。
私はホームに取り残される・・・。
ため息。
改札へと続く人々の姿をぼんやりと見つめる。
遠くに、今まさに改札を通り過ぎた後姿を見つける。
黒っぽい服を着た男のひとだ。
〝先輩に似てる・・・〟
ああっ、ダメだ!
病んでいる・・・
ちゃんと告白すればよかった。
噂を本気にして、あの美人に勝てるはずがない、ってあきらめていた・・・。
友人にも、
「気持ちを伝えるだけ伝えたら?」
と言われたけど、どうしても勇気が出なかった。
こんなに後悔するとは、思ってもみなかった・・・。
視線を感じたのか、先輩似の背中が私の方に振り向いた。
目が合った。
そんな気がした。
その瞬間、男の姿が人の波に消えた。
無表情なのに、妙に印象に残る視線を残して・・・
ため息。
先輩の奥さん、どんなひとだろう・・・?
普通のひとでは許せない。
先輩の趣味が変わっていて、とびきりのブス。
それともビーナスみたいな美人ならいいか・・・
分からない。
きっと想像上の人物に嫉妬しているような女は、相手にしてももらえないだろう。
ああ、でも・・・
選んでくれたら、きっと変われるのに・・・。
ダメだ!
新しいひとを見つけようっ。
先輩はすっぱり忘れて、恋人を作ろう!
頑張れ私!




