言語の存在
人間の尺度と三次元の尺度。三次元という非生物な空間は人を閉じ込めた。
神様ぁ。
君たちも知っているだろう? 何せ今聞こえただろうしな。神様は神様と鳴くんだよ。犬だってワンワン鳴くワン公だろ? 人間だって、きっとニンゲンニンゲン、なんて鳴いてると思うぜ。
あ? んなこたねぇってかァ……。
――――それは、悪魔の証明になるんじゃねえかなぁ……なんて。
よく考えてみろよ。この世界はおおよそ人間が仕切ってる、てのはわかるよな?
ああ、『当たり前だ』、なんて顔してんな。だったらよ、お前らは犬の言葉がわかるか?
――――犬だって「ワンワン」で意志疎通してんだ。立派な犬語だろ。
言ってること、わかるよな? ああ、、、、その歪なトコが好きなんだよ。
科学者は実証する生き物なんだから、当たり前だとかつまらない固定観念に阻まれてちゃわけねぇだろって。
目の前の……いや、遠くにいるのかもしれない悪魔はそう言って笑った。嘲笑う様でも微笑む様でもあったが、決して私たちに対する同情や共感の笑みではなく、愉悦が溢れ出た故の笑みに違いなかった。
にしても、人間がニンゲンと鳴いているとしたら、何語で鳴いているのだろうか。日本語なら“人間”。Englishなら“human”。いや、案外日本人は“日本人”、Britishは“British”や“English”と鳴いているのかもしれない。
一次元の観測は点、二次元の観測は棒であることを考えると、四次元や五次元といった高次元に住む者にとっては案外“ニンゲン”と聞こえるのかもしれない。一次元に住む者には三次元から観測できない長さがあって、二次元に住む者には同じく観測できない面が存在する様に、三次元内から観測できる空間は四次元からは面の様に見えて、奥行きの無い音は思い込みから“ニンゲン”という響きを持つのだろうか。
では、言語学者が目指すべきことは四次元から言語を観測することだろう。そのためには四次元に行き、三次元構造をそこで創らなくてはいけない。まずは四次元を研究しようじゃないか。
三次元に閉じ込められても、四次元に渡りたいんだ。
悪魔すらも“悪魔”ではない。三次元視点からの何者かの像でしかないのだ。
研究好きな科学者といわゆる悪魔の2視点です。
読んでくださった方々が楽しめたのなら嬉しいです。
ありがとうございました。