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第8話 世界は静寂を取り戻す


 今夜はどちらも美しい半月の夜。

 とは言え、その月を愛でている暇は、どちらにもなさそうだ。


「お待たせ」

「森羅さま!」

 森羅は、飛火野と玄武・兄がいる北野家へとやってきた。

「危険です。下がっていて下さい」

 飛火野が冷たく、いや、冷静に言う。

「はーい、飛火野ってホント心配性なんだから」

 森羅は良いお返事をしたにもかかわらず、飛火野の忠告を無視して手練れ退治に加わる。飛火野は小さくため息をつきつつも、かなり楽になった事を感じていた。

 森羅がここへ来たのには訳がある。現れた手練れが、ここ北野家が他より多いのだ。しかも少しずつ増えつつある。確かに北野家は、陽ノ下を除けば、このあたりでは一番の名家だし慈善事業にも力を入れている。

「だからって、なんでかな」

 つぶやきつつ、森羅は羽の剣を、ひゅう、と振るのだった。


 ミスターが加わった南野家でも。

 玄武・弟が加勢に入った東野家でも。


 そして。

「どうだ!」

 ここのところゲームをする暇がなくて腕が鈍ってしまった? 訳がなく、それどころかゲームと同じくピンポイントで銃を狙えるので、絶好調の万象が加わった西野家。

「バンちゃん、一度休んで」

「おう、ありがとうな、龍古!」

 パアっと龍古の目が輝いて、しばし休息する万象と朱雀。

「ほーんと、心強いわあ」

 そのあと朱雀は、のほほんとした口調でまたペンを鋭く放つのだった。

 皆、力の限り頑張っている。




 ケケケ・・キュー

 ケケケケ・・・・キュキュー

 なんとも忙しく現れては消え、現れては消える雑魚たち。

「倒しても倒しても、雑魚はいなくならず。ドローンそろそろなくなっちゃいそうよ」

 ちゃぶ台バリケードの内側から、超小型ドローンの攻撃を仕掛けていた雀が、こちらもいつものようにのほほんとした調子で言う。

「うむ、離れに行けばわんさかあるが、今出て行くと鞍馬に怒られそうじゃからの」

「ねー。それにしても、鞍馬すごいわね。さっきから全然休みなしよ」

 スサナルの剣を取り出した鞍馬は、ボコボコと温泉のようにわき出してくる雑魚を、休むことなく消滅させていく。いつものようにポーカーフェイスで、淡々と、淡々と。

 ようやく畑の端まで来たところで、鞍馬は異様な雰囲気にふと顔を上げた。


「なにあれ? ねえ見て、トラばあさま」

「む? なんか出てきたの」

 ドローンに内蔵されたカメラが、それを映し出す。

 見れば、旧・陽ノ下に現れた不気味な大男がこちらにもその姿を現したのだ。

「きゃーいやだあ」

 あまりの不気味さに、雀が声を上げて、思わずドローンを放つ。

 だが、超小型ドローンは、そいつの身体をヒュッと通り抜けてしまったのだ。

「え?」

「ははあ、なるほど。あれは3D映像じゃ。きっと本体はどこかに隠れて高みの見物をしておるのじゃ」

「んま! 卑怯なヤツ」

 そいつは2人にそんなことを言われているとはつゆ知らず、畑でこちらを見上げる鞍馬に気がついた。

「ほほう、お前のような華奢なにーちゃんが、雑魚をこれだけ倒せるとは」

 ギヒヒ、と嫌らしく笑ったそいつは、次に鞍馬の持っているスサナルの剣に目をやった。

「さすがは神の剣。おいお前、そいつをよこせ」

 その言葉に唖然としたのは、鞍馬ではなく雀だった。

「なーによあいつ! あんたなんかに渡せるわけないでしょ!」

 聞こえる訳はないが、雀は思わず叫ぶ。

 すると鞍馬がすっと剣を下ろして、一言。

「なぜですか?」

「なぜってか? だってよお、神の剣なんてずるいじゃん。それも2本も! 1本くらい奪おうと思ったら、なーんか向こうは大変そうだからー、あっちのはあきらめて、こっちの弱そうなにーちゃんから奪うことにきめたのー」

 なるほど、旧・陽ノ下で北野家だけに手練れが増えていた謎が、ここへ来てようやく解けた。ヤツは飛火野の持つコウジンの剣を奪うつもりだったらしい。


「鞍馬は弱くない!」

 また聞こえないとは思うが、雀が悔しそうに叫んだ。


 鞍馬は悪ボスの言い分を聞いていたが、静かに言った。

「あなたがこれを持つのは、危険です」

 大男、もとい、悪ボスはきょとんとしていたが、すぐに大笑いを始めた。

「ガハハハ、危険だと? そうだ、俺様が持てばそいつはこの世で最強の剣になる。向かうところ敵なし! ハッハハー、危険、危険」

 嬉しそうに手を叩いて言うのに、鞍馬は否定する。

「いえ、そういう意味ではありません」

 その言い方が気に障ったのか、悪ボスは大声を上げる。

「うるさい! さっさとよこさないと、ほれ」

 と、東西南北荘の方を仰ぎ見た。

 振り向いた鞍馬が見たのは、中庭の近くの畑から、またボコボコと出てくる雑魚たちだった。

「あんたの大事なばあさんとねーちゃんが、たいへーん」

「!」

 悪ボスの言葉が終わらぬうちに、鞍馬はものすごいスピードで畑を駆け抜ける。

「まだ大丈夫よ! 鞍馬!」

 残り少ないドローンを飛ばし、雀が何体かの雑魚に当てる間に鞍馬はもうそこまで来ていた。

 ケケケケ・・・キュー

 ケケケ・・・キュー

「ハッハハー愉快愉快、やっちまえ!」

 小躍りしている悪ボス。

 悪ボスが登場したためか、雑魚は現れるスピードを速めたようだ。鞍馬は少しずつ息が上がっていく。

「もう! なんなのよ。あ、ドローンが・・・」

 とうとう最後のドローンを打ち終わってしまったのだ。雀は、「ごめん、鞍馬」とシュンと肩を落とした。

「仕方ないのお。鞍馬、悪いが少しだけ頑張ってくれ。ほれ、雀、行くぞ」

 するとトラが雀を促して、あろう事かちゃぶ台バリケードをひょいと持ち上げたのだ。

「ええ!? これってそんなに軽いの?」

「まあな」

「だったら早く言ってよ、もう」

 そのまま中庭に下りて、離れの前に移動する2人。離れの玄関にバリケードを作ると、トラは大急ぎで研究室へ入って行く。

 トラが大きな荷物をかかえて出てくると、雀がなぜか焦っている。

「トラばあさま! 紙と鉛筆ある? 急いで!」と左手を押さえていたのだ。

「おお」

 慌てて紙と鉛筆を持ってくると、雀は左手でサラサラとそこに文字を書いた。

「良かった、書けないと危ないところだったわ」

雀の左手の予知は、彼女にとって良い方向に働くものだけを示すのだ。そしてそれは決して外れない。

 トラが渡した紙には、次のような言葉が書かれていた。


《「・・・・・」


 森羅万象がその名を呼ぶ時、世界は静寂を取り戻す。》


「何じゃ? その点々は?」

 書かれた予知を見たトラばあさんが不思議そうに言う。

「うーん、私にもわかんない」

 これにはとうの雀も、苦笑するしかなかった。


 その間にも、雑魚はどんどんわき上がっていた。だが、鞍馬も負けてはいないようだった。ほとんど中庭に近いところで、2人を守っているようだ。

「ドローン用意できたぞ。今度のはちと強力じゃから、くれぐれも鞍馬には当てぬようにな。よく狙って撃てよ」

「ええ? そうなの? ち、ちょっと待って、怖いから」

 すると、少し乱れた息で鞍馬が言う。

「雀さんは、あの気持ちの悪い方を狙っていただけますか? 気がそれれば少しはましかも、しれません」

「わかったわ、頑張るのよ、鞍馬!」

「はい」

 その雀の一言に、鞍馬の気がぐいんと上がるのがわかる。

「ほほう」

 トラはこんな時なのに、そんな鞍馬に感心するのだった。


「えい!」

 雀のドローンが悪ボスの身体を撃ちまくる。ただしそれらはみな、貫通してしまうのだが。

「なんだお前は、こんな変なものを撃って来やがって」

 すると、今まで幻惑だと思っていた悪ボスが、ぐおんと不気味な音を立てて実体化した。

 そいつはうるさそうにドローンをバシバシとはたいて落とす。

「お前ら! そんなヘナヘナしたヤツにいつまでかかってんだ!」

「キュウウウ~」

 悪ボスの一括に縮こまる雑魚たち。

 そして。

 うおおおお、と雄叫びを上げると、どしどしと畑の向こう側へと歩き出す。

「おい、そこのにーちゃん!」

 鞍馬に呼びかけたそいつは、手を止めた鞍馬に向かって、ガーッハハと嫌らしく笑い、いきなり、ボウン! バキィ! と料理教室の屋根を破壊した。

「!」

 目を見張る鞍馬。

「何すんのよ! あんた!」

 雀の叫びなどどこ吹く風、さも楽しそうに悪ボスが言う。

「お前が剣を渡さないんなら、俺は陽ノ下をぶっ壊すまでだ。さあどーする? そいつらを放り出すか? こっちを見限るか? どっちにしても身体はひとつだよなあ、ああ残念」

 悪ボスの嫌らしい言い方に、珍しく鞍馬がギリ、と、奥歯をかみしめる音がした。

「はやくよこせ!」

 そのあと鞍馬は、うつむきながら静かに歩き始める。

「トラさん、雀さん」

 歩きながら、後ろの2人に呼びかける。それはいつもの鞍馬らしい穏やかな響きの声だった。

「なんじゃ」

「なあに」

「何とかして、森羅くんにこのことを知らせていただけませんか? なるべく時間を稼ぎますので」

 そう言って、鞍馬は悪ボスへと向かって行くのだった。

 その後ろ姿を見つめながら、雀が腕を組んで考え込む。

「森羅にねえ。どうしよう、私、タイムマシンで行ってこようか」

「うーむ、それだとしばし時間がかかるの」

 口調はのほほんとしているが、2人とも顔は真剣だ。

「大声で呼んだら聞こえるかしら、なーんちゃって」

 冗談のつもりでふと口にした雀の言葉に、トラがはっとしている。

「どうしたの?」

「それじゃ! 聞こえるヤツがおるではないか」

「ええ? けど2000年前よ」

「あれに向かって叫ぶんじゃ」

 トラは映像通信を指さした。

 雀もハッと気がついた。

「そうだわ! 私ってすごいじゃない! やるう!」

 嬉しそうに自画自賛した雀は、今までで一番速いスピードで和室に駆け上がると、映像通信装置に向かって、大声で叫び始めた。

「玄武! 玄武ー! 一大事よお、スサナルの剣が悪い奴に取られちゃうー!」



 ほとんど同じ頃の旧・陽ノ下。

「え? あれ? 雀さんの声だ、いつ来たんだろ」

 玄武・弟が雀の声をキャッチする。

「あ、雀さんがなにか叫んでる」

 玄武・兄も同じように声を聞いた。

 そして耳を澄ませていた玄武・弟は、玄武・兄に今聞いた事を復唱するように叫ぶのだった。

「森羅さま!」

 ちょうど北野家にいた玄武・兄が、手練れをかわしつつ息せき切ってやってきたので、森羅が目を見張る。

「どうしたの、そんなに慌てて」

「森羅さま大変! 剣が取られちゃう」

「剣? 剣って誰の?」

「悪ボスが鞍馬さんから剣を取り上げようとしているんだって。そいつ向こうで実体化? したって」

 え? と言う顔でその言葉を聞いていた森羅が、ああ、とわかったように言う。

「鞍馬がいるってことはそれ、2000年後の話だよね」

「うん! 雀さんの声がね、お屋敷の方から聞こえてきたの。玄武・弟も同じ事を聞いたって言ってたから、間違いないよ」

 ピッと旧・陽ノ下家の方を指さす玄武・兄。

「映像通信を使ったのか、さすがだね」

 うんうんと頷いて、玄武・兄の頭をガシガシすると、森羅は彼に伝言を残す。

「ちょっとこれから、万象と2000年後に行かなきゃならないんだ。しばらく大変だろうけど、皆が頑張れるよう祈っておいてね」

「はい!」

「うーん、良いお返事」

 手を上げて宣言する玄武・兄を見て森羅は満足げに笑うと、心を清ませて万象を呼び出す。それは森羅と万象にだけつながる、テレパシーのようなもの。けれどそんなに頻繁には使えない、奥の手だ。

「(万象)」

 頭の中に直接声が響いた万象は、「おわ、何だ?」と、銃を撃つ手を止める。

「(森羅だよ、そいでもってこれはテレパシー)」

「テレパシー?」

 また焦る万象にテレパシーの説明は後回しにして、鞍馬の危機を知らせる。

「(あっちが大変なことになってる。急いで向こうに行くよ、鞍馬を助けなきゃ)」

「鞍馬? 鞍馬がどうしたって言うんだよ!」

「(行けばわかる)」

 そのあと声が聞こえなくなる。

 万象は訳がわからなかったが、鞍馬の一大事なら助けなきゃならない。

 ドオン、と手練れを一度威嚇して、朱雀と龍古に説明する。

「朱雀、龍古、ワリィ。なんか鞍馬が大変なんだそうだ。だから一度あっちへ行ってくる。すまないけど、ここは任せた」

 鞍馬が大変だと聞いて、朱雀も龍古も「早く行ってあげて!」と、万象を急かせる。

「わかった!」

 彼は律儀に頭を下げると、ひゅうんと舞い上がる風とともに消えていった。




 ゆっくりと、ゆっくりと悪ボスの所へ向かう鞍馬。時間稼ぎと言っても、この状況ではこんな方法しかないだろう。

 ただ、悪い奴と言うのは得てして気が短いものだ。

「何してやがる! 早く来い!」

「・・・はい」

 鞍馬は仕方なく歩く速度を速める。

 どうか森羅に知らせが届いているようにと祈りながら。

 そしてとうとう、鞍馬は悪ボスの前まで来てしまった。「遅いぞ!」と、いらつくそいつの前に剣を差し出す。

 勝ち誇ったようにスサナルの剣を奪う悪ボス。

 と同指示に、剣を持っていない手で鞍馬をぶっ飛ばした。

 ドオーン! 

 ものすごい音を立てて鞍馬は畑に突っ込んだ。

 それでも最後の力を振り絞るように起き上がろうとする鞍馬を、悪ボスは一蹴りで遙か遠くへふっ飛ばした。

「はーっははは! 見ろ! スサナルの剣だ! 神様の剣だぜ! 俺は神だ! 神だ!」 と狂ったように剣を振り回す。

 キュー、キュー、と雑魚が剣に当たって吹っ飛ばされている。

 その様子を見ていた雀が「なんてひどい」と、かなわないとわかってはいるがドローンをビシビシ撃ち込む。

「なんだなんだ! そんなもんおもちゃのようだ! はははー見ろ! 見ろ、この力!」

 だがそのうち、悪ボスの様子がおかしくなってきた。

「見ろ俺は神だ! すべてひれ伏せ! 」

 と言いつつ剣を振り回し、とうとう鞍馬が倒れている所までやってきて斬りかかる。しかし剣は鞍馬の手前でヒュウンと空を切る。

 ヒュン! ヒュン!

 何度切りつけても剣は空を切るばかり。

「見たか、この、この? なんだ? うおわああーーー!」

 自分の意思でなく、勝手に剣が動いているようだ。

「やめろやめろ! うわああああ」

 断末魔のような叫びを上げつつ、剣を振り払おうとするが、剣は手から離れない。そのうちボウッと音がして、剣が黒く醜い炎をあげはじめた。

「ヴワァァァァ」

 火がついた手から炎がどんどん燃えさかっていく。そしてとうとう、悪ボスの身体に火が移っていく。



 そこへ、ひゅうんと一陣の風が舞い上がり、2つのシルエットが現れた。

「鞍馬!」

 焦ったように大声で叫んだ万象だったが、燃えさかる炎に包まれた悪ボスを見て唖然とした。どうにも状況を把握しきれないようだ。

「なんだ? どうなっちまってるんだ?」

「万象」

 いつになく真剣な面持ちの森羅が声をかける。

「え?」


「自業自得に陥ったんだよ。スサナルの剣は鏡のように心を写す剣。あいつはきっとあの剣を手にして、自分を神だと慢心したんだろう。己の心を写し出し、剣はその邪心に反応した。ヤツは誰のせいでもなく、自分自身の傲慢の炎に焼かれている」

「自分自身の、傲慢の炎」

「万象言ってたよね。スサナルの剣は激しい感じがするって。それは正解だったんだよ。スサナルの剣は慈愛の剣だけど、それは持つ者が謙虚で慈愛に満ちあふれている場合だ。鞍馬のようにね。けど、ヤツのように自分の業が見えない者は自分自身に滅ぼされてしまう」

「じゃあ、このまま放っておけばいいのか?」

「いや、それでは解決しないよ。自身の傲慢とは言え、業火に焼かれてしまう悔しさから、ヤツはまたよみがえろうとする。それでは駄目なんだ」

「ええ? じゃあどうすんだよ」


 すると、ふっと微笑んだ後に、森羅が思わぬことを言う。

「万象、あいつの名前を呼べ」

「はあ? んなもん知らねーよ!」

「いいや、必ず知ってるよ。早くしないと、あいつが焼き尽くされてしまう。我を忘れたあいつが、大事なトラばあさまや雀や、鞍馬を道連れにするかもしれないよ」

「ええ?! なんだよそれ! 森羅知ってるなら教えてくれぇー」

「駄目だよ、答えは万象が自分で思い出すんだよ」

 そう言った後は、どんなに呼びかけても森羅は答えない。

 その間も悪ボスは断末魔のような声を上げつつ、炎に焼かれている。


 なんだよ! 名前ってなんだよそれ!

 知ってるって? 思い出せって?

 うわあおーーー! もう? あれ? 


 頭を抱えていると、ふと変な言葉が万象の胸の深いところをよぎる。これが名前? 


「ぐわおぉぉぉー」

 そのとき悪ボスが我を忘れたように、倒れている鞍馬にもう一度斬りかかる。


「森羅!」

 万象は思わず叫んで彼を見た。

「思い出したね、さあ、呼ぶよ」


「「∈⊇∠⊥∬∀∃∇」」

 森羅と万象は、同時にその名を呼んだ。


 2人の声は、いったん空に上がって溶け合い、光となって悪ボスの脳天を突き抜ける。

 どおおおーん!


 すると、悪ボスの身体を燃やしていた赤黒い炎が徐々に消えていき、そのあと金銀のつむじ風が吹いてきた。

 悪ボスのつむじ風とともに、雑魚もどんどん空へ舞い上がっていく。

 そのまま悪ボスは、金銀に溶けて天に昇っていった。


 光が消えた後には、畑に突き刺さるスサナルの剣と、ただ静寂だけがそこにあった。





「まさしく昇天じゃの」

 ジジジジ・・・

《森羅万象がその名を呼ぶ時、世界は静寂を取り戻す》

 雀が書いた紙から、文字たちもまた昇天していくのだった。





 ここは旧・陽ノ下家とその周辺。

 ちょっと、いや、かなりへとへとの白虎が、もう一度剣を振り上げた。

 けれど、それを振り下ろす必要はなかった。

「え、あれ?」

 なんと、あっちもへとへとだったが、手練れが自ら消滅し始めたのだ。

「どうなってんだ?」

 唖然としつつその様子を見ていた白虎は、手練れがすべて消えてしまうと、力が抜けたように、バタン! と仰向けに倒れてしまった。


 同じように。

 ペンを投げる朱雀が、目を見開く龍古が。

 銃を構えたミスターが。

 薙刀を振るう一乗寺が、目を見開く青龍が。


 消えていく手練れを見て、そいつらがすべて消えた途端、はあーっと息を吐いて、倒れたり座り込んだりしていた。

 ただ、飛火野だけは、「終わりましたか」と、立ったまま大きく息を吐いたのだった。


 夜が明けようとしていた。




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