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エピローグ


〈エピローグ〉


「すみませんでした!」

 それは翌日の夕方のこと。

 またまた畑を見て、口をあんぐり開けていた担当さんに、米つきバッタのように謝る万象の姿があった。


 説明しよう。

 夜を徹して奮闘した、新・陽ノ下にいた森羅、万象、鞍馬。

 そして旧・陽ノ下にいた四神たちと飛火野、一乗寺は、各々の場所で風呂に放り込まれ汚れを洗い流され(あ、女の子は野郎とは別にね)そのまま寝床に押し込まれて、各々の回復力に合わせた爆睡をさせてもらったのだ。

 森羅は朝の少し遅い時間に起きてきて、やはり旧・陽ノ下が心配だからと、すぐに帰ってしまっていた。


 もちろん、その日万象たちが行うはずの授業はお休みになっている。

 万象は夕方近くまで寝過ごしてしまったので、またドタドタと2階から下りてきたところで、畑にたたずむ担当さんが目にとまる。

「ホント、すみません!」

「あ~万象くんのせいじゃないよお~。それにしても、ここの畑は災難だねえ。ま、あきらめずに、また一から始めましょうや」

 担当さんの優しい言葉に、万象は目を潤ませて、また頭を下げる。

「ありがとうございます。俺に出来ることがあったら何でも言って下さい」

 担当さんはうんうん頷いたあと、「あ、でも」とほっこり笑って言った。

「畑の先生がまた燃えるだろうな~。こうなったら最高の畑をよみがえらせましょう、とかなんとか」

「はあ?」

 訳がわからない万象が聞くと、先日、玄武・弟に授業をしていた少年先生が、いちどボコボコになったここを担当さんと一緒によみがえらせたそうだ。

「だから大丈夫だよ。他の人の学びにもなるしね」

 と、万象の肩を安心させるようにポンと叩いたのだった。


 そして、悪ボスに屋根を壊された料理教室の建物は、学びの先生と生徒たちに修復工事をお任せしたいと、桜子から提案がされた。

 以前、建築現場に通っていたマーブルが、親方と一緒に状況を確認している。

「回復作業も建築にとっては大切な仕事だ。陽ノ下家には災難だったが、良い教材が手に入ったと思って、頑張って修復しようぜ」

「はい!」

 建物を修復する間、料理教室は陽ノ下家の本宅キッチンで行うことになっている。


 助け合うことが常識のこのあたりでは、壊れても倒れても、あきらめることなく、手を取り合い協力し合い、しぶとく楽しみながら起き上がって進んでいく。





〈エピローグ・500年後?〉

 その少年は、閉店間近に彼の店に入ってくると、急に嬉しそうに目にいっぱい涙をためた。

 普段の彼なら、もう遅いから家に帰りなさいと言うのだが、少年には何も言わなかった。

 なぜなら、その少年が千年人だったからだ。


「恐れ入りますが、そろそろ店を閉めなくてはなりませんので」

 おすすめを一品だけオーダーして、飽きることなく自分を見つめ続けて帰る気配のない少年に、彼は声をかけた。

「千年人に巡り会うのが、そんなに久しぶりなのですか?」

「え?」

「いえ、その、ずっとこちらを見られていたようなので」

「あ! すみません!」

 焦るように頭を下げる少年にほほえみかけると、彼は店にCLOSEの札をかけ、窓と雨戸を閉めると、カウンターの席を勧めた。

「よければ少しだけ、お話ししましょうか」

 ぽかんとしていた少年は、なぜかまた涙目になって、

「はい! ありがとうございます」

 と、嬉しそうに言って、自己紹介をした。

「私は、一乗寺 夏久と言います。は、はじめまして!」

 すると彼は、少し驚いた様子で言う。

「あなたは春夏秋冬の、夏、なのですか?」

「はい、けれどもうすぐ1000年を迎えます」

「え? それでは・・・」

「はい、あなたにバトンを渡す方の春夏秋冬です」

 すると今度は彼は、不思議そうに言う。

「なぜ私が、春夏秋冬だとわかったのです?」

「え!」

 目に見えてあたふたと焦る少年に、彼は微笑んで言った。

「あなたはとてもカンの良い方ですね。お察しの通り私は春夏秋冬の秋で、鞍馬 秋と言います」

「あ、そうなんですか! そう、それ! 私はすごくカンが良くて!」

「そうですか、よろしくお願いします」

 そう言うと、すっと手を差し伸べてくる。

 少年は嬉しそうにその手を取って言う。

「鞍馬さんですね。あなたのような方に、バトンが渡せて良かった」

「シュウ、でよろしいですよ」

「え?」

「このあたりの方は、皆わたしをシュウ、と呼びますので」

 すると、なぜか感激したようにまた目に涙をためて彼が言う。

「はい、・・・はい。シュウ、ありがとう」

「では、私もあなたを夏久とお呼びしますね」

「はい!」

 きちんと頭を下げた少年は、

(あのときと同じだ、こんなふうに頭を下げ合って顔を上げると、鞍馬さんはもう消えて・・・!)

 思い出した途端、彼は慌てて頭を上げる。


 けれど彼は消えずに、いつものようにそこで優しく微笑んでいる。

 少年は、こらえきれなくなって彼に願い出ていた。

「あの! しばらくここで働かせていただけませんか!」





ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。

「東西南北荘 4」完結いたしました。

今回もまた、あっちへ飛びこっちへ飛び、鞍馬と飛火野の剣の話や、相変わらず熱くて可愛い? 万象や、冷静で大人の森羅や、などが混じり合った混沌のお話です。

本当はもっと万象の成長物語を書きたいのですが、登場人物たちの個性が強くて、思うように動いてくれません(笑)

けれどこれが、人が書く小説の醍醐味かもしれませんね。

大昔に「ル○ン三世」が言ってたセリフがあるのですが、「コンピューターに計算できないもの、それは「人間のきまぐれ」なんだそうだす。

登場する彼らのきまぐれで、あっちへ飛びこっちへ飛びさせられる読者の方には、お気の毒ですが、どうかおつきあいしてやって下さい。

それでは、またお目にかかれることを楽しみに。

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