異世界転移させられました
突然ですが、皆さんは中2病って知ってますか?
言葉だけなら知ってるけど、どんなのか知らない。と言う方もいると思うので軽く俺が経験してきた事で説明を。
中2病というのは、本来絶対にあるはずがないものを想像してしまいそれを自分は持っているのだと思ってしまう事だ。
例えば、神々の力を受け継ぎ創造と破壊の力を持っているとか、俺はお前ら人間とは違う。神々が俺の力を危惧し力を封印しこの世界へ追放したのだから。とか、この千里眼《左目》と三種類の力をもつ魔眼《右目》が……
っとまぁ色々と想像してしまい、あたかもそれが本当にあるように振る舞ってしまう事だ。
「はぁ……分かっちゃいるんだけどな」
分かってはいる。そんな神々の力なんて存在しないし、魔眼もないし、普通の人間の間に産まれた普通の人間なんだって。
それでもラノベや漫画なんかを見るとつい想像してしまう。
もしかしたら急に女神から異世界転移させられて!とか、神様の間違いで死んじゃってチート能力貰って俺つえぇぇとかさ。
けど、現実はそんなモノ存在しない。いくらそう振る舞ったってそんな力あるわけがないのにね。
だから俺は、今日で中2病を卒業する!
急に卒業を決意したのは……中2病を拗らせた事でボッチを経験し、女子とも普通に喋れなかった。俺の青春は灰色だったんだ。
「今日から俺は普通になる!」
これから俺は普通になって現実で生きるんだ。
カラミティリアという名前も、神々の力も、魔眼も全部捨てる。
「最後にフル装備でもしてみようかな」
黒歴史の象徴の漆黒のコートに四つの安物の指輪。両目に赤と青のカラーコンタクトのフル装備。
あぁ昔は格好いいと思ってたけど、今見ると凄い恥ずかしい!
「こ、この恥ずかしさも今日でおさらばだな」
鏡の前でいつもやっていたポーズを取る。顔を手で押さえ目を全力で開く
「我こそはカラミティリア。天災と呼ばれ」
「お願いです」
「ひいっ!違うんです!この格好は……!」
「この世界に平和を」
「違うんです違うんです!……え?」
え?何この声?俺は一人暮らしでこの部屋には俺しかいないはず。それに世界に平和と言われても……
「まさかっ!新手のドッキリ!カメラはどこって……ちょ!う、うわぁぁ!」
カメラを探していると足下が急に光だして、その光は徐々に輝きを増していき俺は目を開けていられなくなり目を閉じると同時に意識が遠くなるのを感じた。
「んっ知らない天井だ」
一回は言ってみたい台詞ランキング上位を本当に言う日がくるなんて思っても見なかった。
「うん。天井というよりは、屋根だったよ」
目の前には、バス停にありそうな簡易的な屋根のような物が置いてある。
いつの間にこんな場所で寝てしまったんだろうか?
俺は確か家にいて、中2病を卒業しようとフル装備で鏡の前でポーズを取った時に声がしたと思ったら光ったのは覚えてる。そして今ここで寝ていると。
「世界に平和か……あれ?これってもしかして、異世界転移ってやつ!?」
まさか、アニメやラノベによくある突然女神やら何やらに呼び出される、あの異世界転移ってやつなのか!?
ってことは
「ステータス!」
反応無し
「スキル!」
反応無し
「ファイアー!」
反応無し
何なのこれぇぇ!超恥ずかしい!!もう嫌だ……
「周りに人何ていないし、ただただ平原続きって……」
周りを見渡しても、緑一杯の草原が広がってるだけ。
そんな所にこんなバス停みたいな屋根一つってむしろ怪しいと思うんだけど。優しさのつもり!?
「こっからどうすればいいんだよ……魔王を倒してとか、何かの球集めてとか何も言われずに世界に平和をってわかんないからね!」
普通アニメとかラノベでは、異世界転移する前とかした後にこの世界でやるべき事とか具体的に説明される筈なんだけどな。
俺は平和の為に何をすればいいんだ。
「それに今の服装ってあの時のままじゃん!ってことはカラーコンタクトも」
うん。カラーコンタクトは無いみたい。
だって取ろうとしても取れないし。
それでも、漆黒のコートに四つの指輪って……俺は卒業する為に着たのに着たままって……ん?
・聖魔のコート
神々の加護を受けしコート。
・聖霊の指輪×2
聖霊と契約を交わした証。この指輪があれば聖霊召喚が可能。主しか使用不可
・邪竜の指輪
邪竜が封印されている指輪
何か見える。これが鑑定というやつなのか。
けど、何で……左目《千里眼》かぁぁ!?……ってことはカラーコンタクトが本当の千里眼と魔眼になったって事なのか
「もしかして、神々の力も使えちゃったりするのか?」
まずは創造の力から確認だ。
とりあえず剣だ!剣を創造せよ!
「あれ?出ない?」
どんな剣なのかをしっかりとイメージしてから創造と念じる。
すると、左手が光りイメージした通りの剣が地面に現れた。
「マジかよ……ってことは」
出てきた剣を掴み、破壊と念じると掴んでいた剣が壊れ始め、足元には剣の残骸が散らばった。
「おっほぉぉ!俺の中2設定が本当になってる!ってことは俺つえぇぇできるじゃん!」
夢にまで見ていた力が、今まさにこの手にある。
卒業しようとしていた中2病が本当になったんだ!
これから俺の異世界生活が始まると思うと、わくわくが止まらない。
「やることわかんねぇけど、楽しむぜ異世界!」
目の前に広がる草原を一直線に走っていく。
もっとこの世界を見たい。知りたい。
今はそんな思いが胸に広がっている。