↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/26

26話「真の大竜殺し」

 竜のいる方角に向けて馬車を飛ばし続けた。

 具体的にどの程度の時間が経過したかまではわからないが、太陽はかなり傾いてきている。


「そろそろ近くなってきたの」

「わかりました。心しておきます」


 戦闘の開始までそう遠くないことを予感させ、馬車内に緊張が走る。


「あの、エイトさん。エイトさんが竜と戦っている間、私達はどうしてればいいんでしょうか?」

「ああ。ルナと二人で安全な場所に避難していてくれ。事が収まるまで馬車で逃げてくれても構わない」


 尤も、安全な場所なんてものが存在するのかは甚だ疑問ではあるが。


「はい。ご武運を祈ってます」

「悔しいですが、今のわたくしたちではお二人の邪魔にしかなりませんわね……」

「いや二人がいてくれてよかったよ。ただ近くにいてくれるだけでちょっと安心するってもんだ。それに最悪の場合二人には王都まで無事に逃げ帰って俺が敵わなかったことを報告してもらう必要がある」


 最悪の場合――つまり、万が一にも俺が負ける、なんてことがありえるとは思わないが、念には念を入れるべきだ。


 話を聞いていたウォーレンさんが申し訳なさそうに会話に入ってくる。


「あのー。儂も戦えんから嬢ちゃんたちと一緒に逃げさせてもらうぞい」

「「「え?」」」


 衝撃的すぎる告白に互いの顔を見合わせる。


「いや、ちょっと待ってくれよ。あんた風のウォーレンなんて呼ばれてる賢者なんだろ!? 戦えないってどういうこと!?」

「そりゃ、昔はブイブイいわせとったもんじゃが、もう歳だからのう。身体が思うように動かんわい」


 四賢者と言えど、寄る年波には勝てないというわけか。


「なら、ナギサたちを守ることくらいはできないんですか?」

「それも正直、無理じゃろうなあ。大竜の攻撃なんてくらえば儂の魔法なんかじゃひとたまりもないわい。じゃからお主にかかっておるぞ」


 俺が竜との戦闘に集中できるよう、ウォーレンさんにはナギサたちの護衛とサポートをお願いするつもりだったが、まさか、俺一人で全てやる羽目になるとは。


「よくそれで俺に賭けてついてくる気になりましたね……。まだどこの馬の骨ともしれないのに」

「まあ、ホムラからお主のことは聞いたからのう。なら、疑う余地はないわい」

「ホムラさんのことずいぶんと信頼されてるんですね」

「昔からやるやつじゃったからのう」


 ウォーレンさん少し黙り、険しい顔になる。


「おっと、来よったぞ」


 馬車を停めて、外に出る。

 北の空から巨大な影が高速で飛翔しているのを目視する。


「じゃあナギサたちは安全な場所へ。ウォーレンさん可能な限りで構わないのでどうか守ってあげてください」

「うむ。任せろとまでは言い切れんが、降り注ぐ火の粉の盾くらいにはなてやるわい」

「どうか、ご武運を」

「信じていますわ」


 3人を乗せた馬車が走り去る

 手のひらを拳で2回叩き、気合を入れた。


「さ、やってやりますか」


(どうする、オレがいくか?)


 どこからともなく脳に直接声が響いてきた。俺も念話での応対を試みる。


(ブラストか。今回は俺だけでやるよ。もしナギサたちの方に攻撃が向かいそうなら、いざというときは頼む)

(ああ、わかった。ただし、オマエが危機に陥ったなら問答無用で出るぞ)

(頼む。じゃあ行くよ)


 竜はこちらに気づいている様子はない。このままだと頭上を通過しそうな勢いだ。

 なら、まずはここにいることを示すのが先決か。


「【火よ、焼き尽くし給え!】」

「『炎弾(ファイア・ボール)』!」


 天に向かって巨大な火球を放つ。

 別に当てようだなんて思っていない。ひとまずこちらに気付かせることが目的だ。当たれば御の字。


 そして、当然『炎弾(ファイア・ボール)』は彼方へと飛んでいく。

 偏差射撃の腕を磨くか、いや、追尾するようにするのもいいな。出来るか知らないが。


 竜はこちらに気が付いた様子で、俺の頭上を旋回している。まず注意を向けさせるという第一目標はクリア。

 とはいえ、こうも距離があるとこちらからの攻撃が楽々と避けられてしまう。

 どうしたものか。


 しばらく膠着状態が続き、竜が先にアクションを起こす。

 その場で停止し、両翼を大きく上に振り上げた。

 少しの間ためて、下へと振り下ろす。


 地上へと向かって大きな風の渦が巻き起こされた。


「【大いなる風よ!猛り狂い!全てを飲み込め!!】」

「『暴食の竜巻《タイラント・トルネード》!!!』


 対抗し、こちらも点まで昇る竜巻を発生させる。

 目には目を、歯には歯を、竜巻には竜巻を。


 竜巻は互いにぶつかり合い、勢力を削り合う。

 だが、こちらの方が威力が高い。少しの間、拮抗していたがすぐに完全に打ち消した。


 いける。威力で押している。これは勝てるぞ。


 しかし、空を飛んでいる相手には有効打がない。

 相手もそれを理解しているからこそ、決して地上には降りてこないだろう。


 なら、叩き落とせばいい。


「【土よ、変われ!】」

「粘土(チェンジ・アース)!!」


 俺が立っている地面を垂直に盛り上げる。

 大地は柱となり、俺を乗せてどこまでも上昇していく。


 敵と同じ高度まで達した。これで十分だ。


 竜はあわてて翼を後ろに仰け反らせる。

 また、さっきと同じく竜巻を発生させるつもりだろう。


 だが、もう遅い。


「【風よ、爆ぜろ!】」

「風撃(エアロ・バースト)!!」


 竜は俺いる足場に向かって竜巻を放つ。

 それに反応し、掌に圧縮した風を下に解放し、竜に向かって飛び上がった。

 竜巻を受け『粘土(チェンジ・アース)』によって変形した足場が崩される。


 空中で2発目の『風撃』を放ち竜に向かって加速する。

 一度の詠唱で使える『風撃』は5発だ。残り3発であいつを地に沈める!


 さあ、手の届く範囲まで来た。

 全力で真下に殴りつける。当然ヒットする瞬間には『風撃』をお見舞いする。

 竜はギエーとうめき声を上げながら落下していった。


 4発目の『風撃』は上に向かって発動する。

 竜に負けず劣らずのスピードで落下できる。


 そして、竜は地面に激突した。一方俺は、最後の『風撃』で落下の衝撃を打ち消す。

 落下のダーメジで上手く動けない竜の首の上にまたがる。


 さあ、終わりにしようか。


「【風よ!万物を断て!!】」

「『不可視の刃(ヒドゥン・ブレード)!!!』


 風の刃で竜の頭と胴体を一刀両断する。


 グラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 竜の断末魔が周囲に響き渡る。そして、それはナギサたちに竜の絶命を知らせるサインでもある。



 やった! やってやったぞ! 今度こそ俺だけの力で大竜を狩ったんだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。