表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪われたJOKER  作者: 七氏
4/5

エゴイスト

 無機的な暗がりが床、壁、天井、そしてコンピュータの並んだ長い机の全てに塗られていた。十個程のモニターからは妖精のように穏やかなブルーライトが放たれて、付近の物体を涼やかにあしらっていた。画面に表示される動向は、いとおしい神経細胞の驚異なる協調だ。千億個の主人公が緻密なネットワークを形成し、高度な意識を構築する。偏に巨大で精巧な生体組織は、ハードウェアによって未だ再現するに至っていない。自己評価の低い人間に導入すべき創見を述べると、心という組織を保持している貴方は、生きているだけで素晴らしい。静寂と隔絶を伴った甚だしい奇跡なのだからと。それが一見して普遍的になっているのは、ただ、賢い人間が周りに多く居過ぎただけである。

 僕が今ここに実在するのは三次元的世界であった。清潔な状況下で洗浄された白衣を羽織り、どうしようもない欲望を抱えて立ち尽くしている。打ち明けるが、この部屋の隣には、僕のような愚鈍な存在とは相容れない高等な正義が潜んでいる。潔白で可憐な、純真な人体が命を燃やしている。儚くも美しいそれは、どんな作為的な要素も含まれていなかった。そんな驚嘆に値する幸福の塊に、清らかな栄養を補給しているのは僕であった。一般社会の視点から見れば異様な光景だ。そんなことは僕自身がとうの前から自覚している。ただ、我々を包括的に支配する運命は、現実の進行を止めてはくれないのである。周囲の環境や過去の境遇が、現在の言動をマリオネットのように扱っているのは自明の事実であろう。因果律を破壊する生物はこの次元に現れることができない。全人類と全宇宙は神の下した流れに逆らえない。だから、僕も例外なく責任を負うことができなくなった。危険な思想だという声もあろう。だが、僕はそんな意見に耳を貸そうとは毛頭思わない。自分は自分のために、今後の様相を果てしなく見守っていく。様々な懊悩に揺さぶられながら、自我の価値を推し量りながら、真っ暗闇のトンネルを突き進んでいく。それぐらい、僕の胸に大きな穴が開いて、そこから冷たい風がびゅうびゅう吹き抜けるような鈍い痛みに支配されて……つまり僕は悲しいのだ。僕という奇抜な関数を、本当は誰かに紐解いて欲しかったのだ。僕の精神に内在する異常な景色を、解明して欲しかったのだ。そしてもう一つ……本来の愛というものが何かを教えて欲しかったのだ。僕は元より、安らかな愛というものを注がれたことがなかった。僕が常時飲まされてきたのは、温もりの欠片もない自我主義の、一辺倒の愛情だけであった。僕は悔しい。これまでの人生に降り注ぐ驚異なる障害物を目の前にして、僕がどれ程煩悶したことか。僕は大量のくじの中から、鮮やかに外れを引いたのだ。外れくじは生きる価値がないのだと罵られる。白眼視される。だから僕は他人と、外面的な能力を取引することを思い付いた。次いでに内面的な部分も改善を施した。

 しかし僕は、所詮はコピーに過ぎない。ある人物の肉体を写し取った、人としての人生の鱗片に過ぎない。その事実関係をぐるりは察知しているだろうか。恐ろしいほど不思議な現象を体現する僕という存在は? 日本国に驚くべき怪物が誕生したことを悟った人はどれくらい居るだろう? 何にせよ、僕は外界のどんな刺激に対しても受動的にならざるを得なかった。

 僕の計画は既に次の段階に進んでいる。全てはこの世の真理と愛のために、眼前のプログラムを遂行するのみであった。


なんかヤバい文章になりましたが、わざとです……汗

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ