第3話 誰かさんと遊ぼう!
私の勘が言っている。
もしこの森を抜けられたら現実世界に戻って、家に戻れるんじゃないかって。
なぜかはわからないけど、そんな気がする。
でも、北(?)の反対側では、不思議な光が舞っている。
白い光を囲むように赤い膜のような光が一方に飛んで、いや青い光も、ピンク色の光も見える。
ということは誰かが意図的に放っているに違いない。
でも赤の他人なんだし、仮に悲鳴を上げた女性が被害に遭っていたしても、私は北の森の方角を走ればそれで完結する。
……。
足は北を向きつつも、おへそは北を向きたくてしかたない。
赤の他人だから。でも、死ぬのを見過ごせないから。
私は足をターンし、不自然に放たれる光の先へと重力が引っ張られるように走った。
「待ってて―!誰かいるんですかー!」
私は体の酸素を全て放射して叫んだが、変化はない。
だから猪突猛進と言ったらいいのか表現がつかないけど、とにかく心配で顔がこわばっていた。
距離が近づいていたのか女性の声が分かった!
「うぅー!ダメか!もう…限界」
先ほどまでの光の量も少なくなり、それが彼女のモノだと知る。
この長さにして彼女の死にそうな荒い息遣いが聞こえて、私の靴下は草と木の棒で刺さりながら向かう。
女性を襲う誰かさん-タカ・ワシといった鳥類の巨大版と言えばわかってもらえるかな-そのタカが彼女の体をついばんで、おそらく殺して食べようとしている。
「いやっ!」と私の身体が震えると、後もうちょっとで森を抜けて彼女と会えそうだから、後悔しそうだから、脚がバネみたく伸縮し、そして自分史上最高に高く飛ぶ。
うわあああああああ!と地面と空の差にびくつくのもつかの間、タカもびっくりするような強烈な衝撃音を出して地面に着地した。毎度おなじみのドジがここで起こるなんて自分いや!
手が熱い!ひざが熱い!と赤く痛んだ箇所をふーふーと息をかける。
4息かけるとそういえばタカがいたなと思い、俊足で首を振ると、見せられないほど泣き顔で臆病になっている彼女もいた。
大丈夫ですか、と私が声をかけると、それより……と彼女はタカの存在をひどく気にしている。
ここで困ったことがある。
どうしよう。
あー何も考えてなかった―!
タカらしき巨大生物が吠えると、私は頭をわしゃわしゃした。
「貴方何しに来たんですかー!」
彼女は涙目で訴えかける。
あーどうしよう!あーミイラ取りがミイラになるんじゃあ。
よく見ると、彼女は魔女のような帽子をかぶって謎の光を放ち、私にタカのくちばしが来ないよう必死に守っている。
あなたってひょっとして……。
彼女は呪文を唱え、魔法の杖が光り、謎のカラー光線を放ちタカに攻撃を加えている。
ところが彼女も限界がきて、タカのくちばしのよけると体勢が崩れ、「ダメっ!」と魔法の杖が少し遠くに飛んで行った。
一秒を争うときに私も彼女もあの距離者取りに行けない!
まずい、あの人の技はあのステッキがないとできないと思う!
私は、あの人のどう役に立てばいいんだろう!!?
ああ、私ってやっぱ生きちゃいけないんだ……。
タカが獲物をついばむ感覚で口を開こうとし、「ボクは終わりだぁ」と彼女が最後の言葉を言う。
杖があれば、杖があれば……。
そうだ!思いついた!
「あの、これ使ってください!」
私はポケットに入れておいた鉛筆を彼女に渡した。
いきなり巨大な目玉の中に何かが飛び入りそうだと思ったタカはいったん身を引き、再び挑戦しようと口を開く。
「ひょっとして魔法少女さん、これで魔法使えますか?」
声が震える、お願い!
その魔法少女さんは、涙を漏らし大喜びになって「はいっ!」と答えた。
彼女は私に頼むごとをしたいといい、あり得ないことが起こった。
彼女は何らかの魔法を鉛筆に吹き付けたあと、私に投げ返したのだ。
一瞬のスキが命取りであることを知っているように、そうさせまいとタカも口ばしを開かせる。
「私はダメでも、貴方はまだ元気だから、詠唱を」
魔法少女さんはよろよろしながら立ち大の字になる。この人死ぬつもりなの!?
詠唱って何?何を唱えればいいの!?私は魔法少女さんじゃない!
私はこの世界の人じゃない!!!!!!!
あれっ?この感覚は、デジャブ?
私がここに来た目的は、お友達と遊びたい!
誰かが不幸になる世界で楽しめるはずがない!
「私の願いは、皆とお友達になること!」
そう願うと鉛筆は太陽より強い光を放つ。光は森を超え、空を白色に染め、存在そのものが見えなくなる。
そのとてつもない光の強さにタカは逃げ出してしまった。
辺り一帯静まると、再び静寂した夜が訪れた。
私たちは安心感よりも、光の浴びすぎによる目の痛みでそれどころではなかった。
「いったーい!」
目が、目がああああああ。
その痛覚を感じる間に、いきなりエネルギー切れしたバッテリーのように倒れたのを頭で感じた。
目の前が真っ暗で、まるでここに来る時のような感触を再び味わう。
私はその暗い闇の中を重力もなく漂いながら、謎の言葉を聞いた。
「あなたはもしや、魔法でもなく、剣士でもなく、弓使いでもなく、槍使いでもない、
全ての能力をレベルマックスする力があるか。
神は再臨する。すべての者を平等に導くとき、それは神なしではできないだろう。
私はそのような”崩壊の神”を生かすことはできないが」
う~ん、わかんないや。