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サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
エピローグ:恋人・江野誠/現在(プロ七年目)
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待ってる。

「でも、きっと、マコが本気で願えば、夢に現れるんじゃないかな。ただ、セックスするか、サッカーするか、マコ次第だね」

『っ……!』


江野の深層心理では、赤間とセックスはさほど結びつかないにちがいない。

セックスがしたいだけなら、夢の中でまで、赤間を引っ張り出すことはないのだ。

初恋の相手から、ハリウッドの女優まで、誰でも自由に夢見ることができる。


「夢で誰とやっても、べつに怒らないからね、好きにしていいよ。まあ、鈴木リンを夢に見ても、黙っといて欲しいけど」

『……優児。根に持ってるのか、アレを……?』

「さあね。──ついでに言えば、夢でくらい、マコも妻子がいるしあわせを味わうといいよ。もし、そのしあわせにハマって、夢から醒めたくなかったら、そっちが現実だっておもっちゃっても、いいから」

『そうだな』


ちょっと怒ったような低い声が返る。


『そういう現実を選んだ俺も、べつの世界にはいて、おまえはそれを夢でのぞき見たのかもな?』

「べつ、せかい……?」

『だけど、ここにいる俺は、おまえと生きることを選んだんだ。これが、俺の現実だ。会いたいし、独り寝はつらいし、苦しくないとは言わないが、それでも俺はおまえと結ばれていない現実なんかに行く気はない。じたばたして、だからこそよろこびもでかい、俺はそういう人生を味わいたいし、おまえにだって味わわせたいとおもってる』

「マコ……」

『俺が、何でもできるおまえにも、ままならない現実ってのを味わわせたくて引き込んだのが、この世界なんだ。そうおもってくれ。おまえが俺に選ばせたんじゃなく、俺がおまえに選ばせたんだ。たぶん、どっちだっておなじことだから、おまえはそうおもっていろ。この苦しい現実におまえひとりを残して、俺はどこにも行ったりしない!』


ぽろ、と涙がこぼれた。

泣いている赤間なんて見たくない、と江野は言っていたから、見せずに済んでほっとする。


「────やっぱり、今日のマコはちょっと変だな。いつもなら言わないようなことばっかり言ってる」

『気づいてるんだ』

「え?」

『帰ろうか、どうしようか、って迷って電話してきたんだろ? FFのファンが受け入れてくれるかどうかだけじゃなく、俺のところに戻ってもいいのか、っておまえはほんとうは迷ってる。ちがうか?』

「ん……そう」

『迷うのは、したい方を選ぶべきじゃない、って自制が働いてるからだ。そうだろ?』

「そ、……か。そうなんだろうな」

『わざわざマンFファンの恨みなんか買ってくることはない。俺の力になるから、なんて条件もべつにいらない。おまえは、おまえのためだけに帰ってきていいんだ。俺は、ちゃんと待ってる。ファンなんかどうでもいい、勝負なんかどうだっていいっていう、何でもできるくせにちっともやる気を出さない困ったチームメイトじゃなくて──』


一息おいて、江野は優児、とやさしく呼んだ。

深い愛の、にじんだ声──


『それでも俺のことは好きだって、柄にもなくじたばたしてる、いとしい恋人のおまえを、だ』



非常に長い、しかし「サイドストーリー」というとんでもない一品を読んで下さったことに、感謝しています。できれば、KFJ本編や赤間の恋の成就を描いた(18禁ですが)「ナミダ」もご覧ください。


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