七年前の映像
紀藤悠一:FF所属。大卒入団。神前の親友にして、頭脳的右腕。既婚。
『──そういえば』
「ん?」
『FFの公式サイトで、今、レグルス杯で優勝したときの映像が見られるようになってる』
「……それって、まさか、俺のゴールもなの?」
『そうだ。直くんがキャンプで掲げたチームの今季の目標が、レグルス杯奪還なんだ。リーグ戦も優勝争いはめざそう、とは言ってたけど』
「一度獲ったところを目標に、か。2部経験しかない選手たちを引っ張るには、高すぎず低すぎない、いい目標だね。たぶん、直くんが掲げてんじゃないな、それ」
『紀藤さん、か?』
「だとおもう。第一、直くんなら、公式サイトでファンにまで刷り込もうとはしないだろ」
『──それはそうだけど』
「俺のゴール映像まで見せて、ファンを誘導してくれてんのか。なるほど……やるね」
『どういう意味だ?』
「どういうって…………それで、獲れそうなの?」
『予選ぐらいは勝ち上がれそうだけどな。トーナメントで、1部の上の方を負かしていくのは──奇跡が必要、だとおもう』
「リーグ戦はどう?」
『はじめの方はいくつか負けたけど、最近はアウェイでも引き分けでしのげるようになってきた。今は一〇位だけど、上がりそうか下がりそうかと言えば、上がりそうではある』
おもわず、赤間は笑った。
「まあ、正直なのはいいけど。マコはキャプテンなんだから。楽勝、って顔してないと」
『そんな顔はできない。おまえじゃないんだ』
「そうだねー。紀藤さんは、きっとレグルス杯の記憶を使えば、その奇跡とやらをファンが期待するようになる、とおもってるんじゃないかな」
『は?』
「赤間優児が戻ってくれば、優勝争いもタイトル奪還も夢じゃない、ってファンがおもってくれるようになれば、裏切り者の帰還を歓迎するようになるかも、ってことじゃないの? まあ、まだ、俺を獲ろうって話になるかは五分って気がするけど。少しは可能性があるのかな」
『そ……そんなことを考えてたのか』
「だとおもうけど。そうおもってるんじゃないなら、その公式サイトの映像の話は何だったの?」
『…………』
「マコ?」
『笑うなよ』
「うん?」
『あのレグルス杯決勝のおまえは、今見ても、惚れ惚れするくらいかっこ良かったりする、から──ああいうのを、目の前で、見れたらなーと』
「────マコ」
『な……なんだ?』
「大丈夫? もしかして、眠れないくらい、参ってるの? どうしても、どうしても、どうしてもつらいなら、浮気しちゃっても嫌ったりはしないよ?」
『ち……! ちがっ──というか。俺はおまえの映像を見てちゃいけないのか!』
「いいけど。サッカーの映像で抜くのはどうかとおもうよ?」
『っっっっっっ…………!』
何か言いたそうな気配は電話の向こうから伝わってくるが、江野は肯定だけでなく、否定も返さなかった。
「それに、レグルス杯獲ったの、俺が高校生のときだよ? 今のマコより、七つも年下」
『優児……それ以上は、勘弁してくれ』




