表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
エピローグ:恋人・江野誠/現在(プロ七年目)
56/60

極めつけの、バカな選択

「一樹に言われたことを、こないだ思い出したんだけどね」

『曽根さんに?』

「俺は、虎が狼の群れに入っているようなもの、だってさ。マコにとっては当然、群れで仕留めるべき獲物を、ひとりで仕留めようとするとんでもないやつ、だったんだろうね」

『虎が狼の群れに、か。そこまでぶっ飛んで異質ではなかったとおもうけどな』

「そう?」

『でも、虎は当たってるかもしれない。俺からすると勝手気ままでわけがわからないけど、つい、見とれてしまうかっこ良さがあって──』

「マコ、ちょっと会わない間に、妄想広げてない? 実物見たら、こんなていどだったかーってがっかりするんじゃないの?」

『俺はずっと、おまえの評価は最小限にしてたぞ。それでも、顔見れば、悔しくなるくらいには、おまえは文句なくかっこいい男だった』

「どうしたの、そんな甘いセリフばっかり言ってくれて。俺を、恋しがらせて、また帰国させようとしてるの?」

『ちがう!』

「そ? 帰りたいけど、今は終盤戦だから、ちょっとムリ。あのとき、帰国させてくれたら、最後までちゃんと働くって監督に約束しちゃったからね」

『恋人に会いたいから帰国する、なんてまるっきりの私用で、監督から許可を引き出せる選手なんて、おまえだけだろうな』

「人間同士だもん。メリットがあれば誰とだって交渉くらいできるよ。言っとくけど、騙しても脅してもないし、約束はちゃんと守ってるよ」

『選手はふつう、干されたらどうしようとか、おもうものだけどな?』

「干してくれる方が楽だなー。働かないで済むし。まあ、俺を働かせたいのなら、交渉にのるしかないよね。ちなみに、俺も、結果よりもメンツにこだわるようなバカとは交渉しないよ。バカのために働く気もないし」


電話口で、ため息が聞こえた。


『優児。おまえほんとは、極めつけのバカは俺だとおもってるんじゃないのか?』

「ふ、ふふふっ。バカだとはおもってないけど、言われてみれば、俺がバカだとおもうことを端からやってるのがマコかもね」

『……やっぱりか』

「極めつけは、俺とつき合ったことだよ。──でも、バカなことをするマコが、俺はいとしくてね。バカな選択も、マコがすればいとしいよ。直くんだったら、バカはおまえの方だー、って言いそう。それって、当たってるよね?」

『…………いくら直くんでも、恋人をバカ呼ばわりされたら、殴ってやる』

「……恋人」

『優児』

「ん?」

『わがまま言う気はないけど──会いたい、とおもってるのは事実だ。もう一ヶ月も待てばいいことはわかってるけどな、俺は、どこかじゃなく、ここに、帰ってきて欲しい』

「……マコがそんなこと言うなんて、びっくりだな」

『言、わない気だったんだけどな。──理由は、おまえとセックスしたいからじゃなく、おまえといっしょのピッチに立ちたいからだと、おもっといてくれるか?』


きっと、理由の八割くらいは、セックスがしたいから、なのだろう。

べつに、赤間とのセックスを恋しがるのは、江野が性欲旺盛だからなわけではない。

虜のように欲しがられることには、むしろ、赤間は慣れっこだ。

この五ヶ月のうちに会ったのは、たったの一夜きり。

赤間だって爆発しそうなほど、江野が恋しかった。

がまんを強いられているからこそ、欲しいきもちがあとからあとから積もっていく。

毎晩自分で触れて慰めても、焼け石に水と言っていい。

きっと、江野もおなじか、それ以上の恋しさに耐えているのだろう。


「そうだね。あんなふうに言われたら、おなじピッチに立って、勝つために戦うところをマコに見せたいとおもうよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ