信じる相手、甘える相手
「大樹には、一樹。一樹には、大樹だ?」
『ははっ。やっぱりおまえは賢いなー、優児』
『いちいちすがたなんか見ていなくても、どこにいるかはわかってる。心から、そこにいるに決まってると、安心してられる。江野誠にとっても、おまえはそんな存在なのかもしれないぞ?』
「……そんな?」
『信じてるってことだよ、優児。心底信じられる相手なんて、なかなかいねーもんだから。誰かを心配するってことは、放っといて平気だって信じてられねーってことだ。そういう相手は、どんなに大事でも相棒にはなりえない』
『大樹の言うとおりだ。おまえは、江野誠のことをいつだって心配してる。でも、きっと、江野誠の方は、おまえを信頼してるんだとおもう。これからは、少しずつでいいから相手を信じてやれよ。そうすれば、おまえたちの関係も、おまえが不安におもうような一方的なもんじゃなくなって、きっと安定する』
「信じる、って……?」
『直を支えに戻るっていうなら、そうしてもらえ。おまえじゃなくてもできるって、信じてやれ』
『そもそも、出てくおまえを怒るなんておかしいだろ? どこに行こうがおまえの自由だ。代わりに戻るのだって、そいつの自由だ。本人がそうしてーんだ。どうせなら、ひとつくらい、おまえの代わりにできることもあるって、示させてやれよ』
「大樹──」
『優児。おまえが、あんまり何でもかんでもひとりでやってやるから、誤解されるんだ。かっこつけてないで、弱みも見せてやれ。心を開いて、触れさせてやれ。やさしいやつなんだろ? だったら、傷を見て爪を立てるようなひどい真似、するわけないじゃないか。おまえの中身がどんだけボロボロになってるか、見せてやれ』
「……ヤダ」
『優児……』
「やだよ。俺はマコに、笑った顔しか見せたくない。もうさんざん、好きだって言ったから。笑ってないと、マコが本気にする。本気だって知ったら、あいつ、ぜったいバカなこと考えるに決まって──」
一樹のため息が聞こえた。
『まあ、いいさ。これは、おまえと江野の問題だからな。俺たちにできるのは、ひとりでいるおまえを抱きしめてやることだけだ。いくらでも抱きしめてやる。俺たちに甘えてろ』
「ん……」
『優児。俺は横浜で、一樹はさいたまだから、東京にでも密会場所をつくろうぜ。そしたら週一くらいで一樹ともいちゃつける』
『おまえな……』
「それってもう、俺はグラニに行くって決まってんの?」
『とーぜんだ。俺のとこに来てくれ。一樹のそばの方がいいとか言ったら、泣くからな。それに、一樹は体面を気にするから、いっしょに暮らそうとか言わねーぞ。俺が毎晩、風呂で、頭のてっぺんから足の先まで洗ってやる』
『優児は愛玩動物じゃないぞ。っとに、一歩間違うと、ヘンタイだな、こいつ』




