愛でラッピング
『大樹のところだって、俺のところだっていい。──うんと愛してやるから。もう泣かないでくれ。どうか、消えちまったりしないでくれ。……頼む。俺たちは、おまえが大切なんだよ』
「……泣いてないよ」
『うそだ。夢の中の優児は泣いてた。もうひとりで生きてるのがつらいって言ってすがってきた。俺だけじゃなく、大樹も見たって言ってる』
『おまえが同棲するとかいうから、ちったー慰められる相手なのかとおもってたけど。おまえ、柄にもなく情けをかけてる方なんじゃねーの? まさか、オフの時間にまで『マコ』の同期の面倒とか見てんじゃねーだろな? さすがに、ぶん殴るぞ、優児』
赤間は息を呑んだ。
われ知らず、苦笑が浮かぶ。
「マコが変な女に引っかからないように協力してもらってたんだよ。これで、マコが結婚でもしちゃってたらほんと、絶望的だったから。救われてるのは、本当なんだ」
『おまえが心配するほどあいつはモテるのか? 俺の方がイケメンだろ?』
「ぷっ。そりゃ、一般論ではそうだろうけどね。俺は、マコよりいい男はこの世にいないとおもうよ。でも、放っとくと、どうでもいい女をくっつけちゃう質でさ」
『バカ。そりゃ単に、言い寄られたら断われない質ってことだろ。モテねー男の典型だろうが』
「あー、でも、最近はね。断わることをおぼえたみたい。恋人がいるときはおまえに関係ないって言ってたのが、いないって今は言い切るから、いないんだとおもう」
『たまには会ってんのか?』
「うん、たまーにね。同期みんなで誘えば、嫌がらずに来てくれるから。そのとき、俺があげた服をちゃんと着てきてくれるんだ。俺があげたものだってことは知らないふりしてるけど、かならず、着てるすがたを見せてくれる。それが、すっごく、かっこいーんだ」
『服ー? なんだそれ。健気なやつだなー、おまえ』
「ふふっ。俺が、離れてる間もマコに忘れられたくない、毎日存在を思い出して欲しい、ってわがまま言ってたらさ。礼が──いっしょに暮らしてるやつがね、ふたりでマコに似合う服を選んで、それをプレゼントして着てもらったらどうか、って考えてくれたんだ。身につけているあいだは、俺の愛でマコをラッピングしてるようなものだっていうのに、そそられて」
『……なんかそれ、あれだな。こそこそ不倫してるカップルみてー』
『なあ──優児。そいつはほんとに、おまえのこと何ともおもってないのか? 実は、とっくにおまえのことが好きなんじゃないか?』
「なわけないって」
『いや、案外、優児に告白されたら、あっさりオーケーしそうじゃねえ? 言ってみろよ、優児』
赤間は、笑い返した。
「言うわけないよ。そんなことはないし。あったとしても、これから、そんな可能性はなくなるだろうな」




