双子からの電話
『滝田さんから、連絡をもらった』
「ふーん、あのオヤジ、なんて?」
問えば、電話の向こうで一樹がため息をつく。
『江野誠をレンタルから回収するって言っても、優児がサインしてくれない、だって』
「マコを復帰させろって、あんたらが言ったの?」
『優児、言うわけないだろう!』
『そーそ。単に、他の同期はみんな売っ払うつもりだから、チームに残せる選択肢があいつしかないってことだろ』
「──そうだね」
ぐしゃぐしゃと赤間は片手で髪を掻き混ぜた。
相当、頭が混乱していると、自覚する。
『なー、優児。おまえさー。もういいよ』
「もういいって?」
『FFのことは、もういい。背負わなくていい。このまま契約ぶち切って、グラニに来いよ。俺が、滝田さんにもそう言っとくから』
大樹の声は本気だった。
赤間は、笑い飛ばす。
「出ていく気があるなら、契約切れなんて待たずに、とっくに出て行ってるよ」
『わーかってるよ。俺たちのために、そこにいてくれたんだろ? でももう、おまえの心は死にかけてる。離れてても、おまえが泣いてんのがわかる。練習なんかぶっちぎって、抱きしめに行きてーよ。ごめんな、優児。ひとりにして、ごめん』
「大樹……」
『そうだ。ごめんな、優児。俺たちは、おまえに甘えてた。江野が移籍したら、もうおまえ自身にそこにいる理由はないっていうのに……俺たちは、おまえをかっさらいに行かなかった』
「さらうってさ……映画のヒロインじゃないんだから」
赤間は笑ったが、優児、と呼んだ一樹の声は真剣だった。
『最初に会った日にした話をおぼえているか?』
「最初……? なんだろ。帰る場所ってやつ?」
『ああ──そんなことも言ったな。でもそいつじゃなくて。直に言ったやつだ。──直にできないことは、俺たちがやる、って』
『俺たちに無理なことは、優児がやってくれ。そのかわり、おまえの苦手なことは、俺たちがやるからーってやつだ』
「……おぼえてる。それで俺が、俺には無理で、直くんにならできることも、いっこくらいはあるとおもう、って言ったんだ──」
返ったのはいっしゅんの沈黙だったが、赤間にはうなずきに感じた。
『優児。俺たちは、おまえがいっちばん苦手なことをさせてしまっていたよな?』
「一樹──」
『そいつはたぶん、おまえよりも、直の方が向いてること、ってーのそのものだ』
「でも、大樹……」
『大丈夫だ。直はアホだけど、あれでけっこうへこたれねーから。ぐしぐし泣いても、守りたいもん抱えて、歩き出す。あいつにはそこに守りたいものがあるはずだ。だから、大丈夫。あとは、あいつに任せてみる。もう決めた』
『今まで、ありがとう、優児。もういいから、おまえは福岡を出てこい』
やさしい一樹の声が、じわりと胸に染みる。




