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サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
11:降格危機/プロ三年目
50/60

双子からの電話

『滝田さんから、連絡をもらった』

「ふーん、あのオヤジ、なんて?」


問えば、電話の向こうで一樹がため息をつく。


『江野誠をレンタルから回収するって言っても、優児がサインしてくれない、だって』

「マコを復帰させろって、あんたらが言ったの?」

『優児、言うわけないだろう!』

『そーそ。単に、他の同期はみんな売っ払うつもりだから、チームに残せる選択肢があいつしかないってことだろ』

「──そうだね」


ぐしゃぐしゃと赤間は片手で髪を掻き混ぜた。

相当、頭が混乱していると、自覚する。


『なー、優児。おまえさー。もういいよ』

「もういいって?」

『FFのことは、もういい。背負わなくていい。このまま契約ぶち切って、グラニに来いよ。俺が、滝田さんにもそう言っとくから』


大樹の声は本気だった。

赤間は、笑い飛ばす。


「出ていく気があるなら、契約切れなんて待たずに、とっくに出て行ってるよ」

『わーかってるよ。俺たちのために、そこにいてくれたんだろ? でももう、おまえの心は死にかけてる。離れてても、おまえが泣いてんのがわかる。練習なんかぶっちぎって、抱きしめに行きてーよ。ごめんな、優児。ひとりにして、ごめん』

「大樹……」

『そうだ。ごめんな、優児。俺たちは、おまえに甘えてた。江野が移籍したら、もうおまえ自身にそこにいる理由はないっていうのに……俺たちは、おまえをかっさらいに行かなかった』

「さらうってさ……映画のヒロインじゃないんだから」


赤間は笑ったが、優児、と呼んだ一樹の声は真剣だった。


『最初に会った日にした話をおぼえているか?』

「最初……? なんだろ。帰る場所ってやつ?」

『ああ──そんなことも言ったな。でもそいつじゃなくて。直に言ったやつだ。──直にできないことは、俺たちがやる、って』

『俺たちに無理なことは、優児がやってくれ。そのかわり、おまえの苦手なことは、俺たちがやるからーってやつだ』

「……おぼえてる。それで俺が、俺には無理で、直くんにならできることも、いっこくらいはあるとおもう、って言ったんだ──」


返ったのはいっしゅんの沈黙だったが、赤間にはうなずきに感じた。


『優児。俺たちは、おまえがいっちばん苦手なことをさせてしまっていたよな?』

「一樹──」

『そいつはたぶん、おまえよりも、直の方が向いてること、ってーのそのものだ』

「でも、大樹……」

『大丈夫だ。直はアホだけど、あれでけっこうへこたれねーから。ぐしぐし泣いても、守りたいもん抱えて、歩き出す。あいつにはそこに守りたいものがあるはずだ。だから、大丈夫。あとは、あいつに任せてみる。もう決めた』

『今まで、ありがとう、優児。もういいから、おまえは福岡を出てこい』


やさしい一樹の声が、じわりと胸に染みる。



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