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サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
10:レンタル移籍/同日夜
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壊れたプログラム

涙が、にじむ。

他人がどこにいて、誰を選ぼうが、赤間は心の底からどうでもいい。

例え、妹に恋人ができようが、大樹や一樹が結婚しようが、赤間はすこしも構わなかった。

けれど、相手が江野だと、こうも胸が痛む。

胸が痛むのは、なぜなのか。

どうして、こんなにも、江野だけがとくべつなのか──

七年経っても、未だに、赤間にはなぜなのかわからない。

自分の人生に、なぜ、こんな痛みを生む存在が必要なのだろう。

もたらすのは痛みだけではないけれど。

でも、こんなに痛いのなら、いっそ要らないとおもう。

おもうのに、消せなかった。

消せないのだ、決して──

何度も、何度も、手放そうとした想いなのに、一ミリたりとも、その手を離れて行ってはくれなかった。

江野への想いを失えば、まるで、赤間優児そのものが、消えてなくなってしまうかのように。

彼への想いだけは、小揺るぎもしない。

残酷なところをいくら探しても、滑稽なところをどれだけ見つけても、それでも、胸にはいとしさが湧いてくる。

まるで、壊れたプログラムのように。

江野のすべてが、赤間にはいとおしく、愛さずにはいられなかった。


「離れるなら、消えたい。この世から、消えてしまいたい……!」

『いつでも会えるから、優児』

「ひとりで生きるのは、嫌だ。嫌なのに…………俺は、他の人間なんて、いらないんだ」

『知ってるよ。とくべつなのは、マコだけ。でしょう?』

「──どこかに、べつのとくべつがいるって言う? まだ出会ってないだけだ、って。いつかの、『三人目』みたいに?」

『言わない。そんなもの、いないわ。わかってる……優児に必要なのは、マコだけ。慰めてくれるひとはいても、誰も、マコの代わりにはなれない』


優児、と礼が静かに呼んだ。

相手ゴールを見ていた、エースストライカー時代の礼のまなざしが、ふとよみがえる。


『優児は信じられないかもしれないけど、わたしは信じてる。優児は、いつかマコと結ばれる。いつかきっと、マコは優児を選ぶわ』

「ありえない!」

『ありえない、なんて思い込みなんでしょう?』


ぴしゃり、と言い返されてしまう。

赤間は壁に向かって目を見張った。


『だから、わたしは信じる。優児は、マコと結ばれるために生まれてきたんだ、って。すべての障害は、何でもできちゃう優児が、恋を成就させたよろこびを感じるために、不可欠なものなんだわ。そのくらい苦しんで手に入れたものでないと、手に入れてもまだ苦しむようなものでないと、優児には一生大切にすることなんてできないのかも』

「そ……」

『だって──優児は、サッカーも、仲間も、ファンも、みんなが大切におもって必死にしがみつくようなものは、ぜーんぶ、どうだっていいんでしょう?』

「……そうだけど」

『勝利も、栄光も、タイトルも、優児には無価値。なぜなら、手に入って当然のものだから──でしょう?』

「礼……」



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