『仲間』
「ところで。こんな話するために、寄ってきたわけ?」
問えば、たちまち潤が気まずそうな顔をする。
「ああ、ええっと。その……もういっこ、気になってることがあってさ」
「マコのこと?」
ぎょっ、とした潤は、しばし迷ったあと、あのさ、と切り出した。
「優児、古賀礼っておぼえてる?」
「……おぼえてるも何も。礼なら、マコがたまに食事に誘ってるから、そのときは大抵俺もいっしょに行くよ」
「あ、──そうなんだ? マコが今も連絡取ってるのは知ってたけど」
「礼がどうかした?」
「あいつ、高校卒業して、ファッション系の専門学校に行ってるって」
「知ってる。二年制だから、今年までだろ?」
潤が、そわ、とあたりに視線を投げる。
「……会ってるなら知ってるんだよな、優児も。あいつが今、女のカッコしてるの」
「うん。きれいだろ?」
「シャレにならないくらいな。あいつが女だったら、マコの好みっぽい、とかおもう。──じゃなくて!」
椅子に座り直して、赤間の方にやや身を乗りだした。
「今、休学してるんだってさ」
「どうして?」
「家から追い出されて、バイトしてるみたい。あいつの家、親父さんが事業やってるし、姉さんが嫁にいくとかで。なんかもめたらしいよ」
「…………そっか。マコには相談してるのかな」
「いやー、してないっぽい。好きなショップで働けてるし、しがらみが消えてむしろ良かった、とか笑ってたから。本人がそれでいいならいいのかなーともおもったんだけど」
「風当たりが強いのなんか、本人、覚悟の上だからね。マコとか、おまえとか、気にかけてくれるだけでうれしいんだとおもうよ」
「そりゃ、仲間だもん」
赤間の視線の先で、ぐしゃ、と潤が気まずそうに髪を掻く。
「俺、中学のころ、いちばん礼と仲良かったからさー。というか、そうおもってたから……未だに、気がひけてるんだ。あいつの相談に何にものってやれなかったこと。俺にまで、隠させてたこと。マコから聞くまで、美少年って女の子にちやほやされていいなーとかおもってただけだったから」
「潤らしっ」
「笑うなよ。マコがさ、自分のことみたいに真剣な顔で、言えなかったきもちくらいは理解してくれって頭を下げたとき、俺、ちょっと泣いたんだ。マコには敵わねーな、とおもって」
「マコって、すごいよね?」
「うん。だから、礼がどうおもってるかは知らないけど、俺たちは今も、マコのことを大事におもう『仲間』なんだとおもってる」
そう言って、潤は赤間を見つめた。
まるで、おまえのこともおなじだ、と言っているようだ。
赤間はうなずいた。
「礼に連絡してみるよ。俺で力になれることなら、力になるし」
「……そっか。ありがと」
にこっ、と潤は笑ってみせた。
けれど、それでも潤の表情が完全には晴れなかったことを、赤間は見逃してはいなかった。




