残酷な形
「滝田さんは無能じゃない。俺たちを放出した穴は、ちゃんとふさぐ。今後、チームの核は優児、おまえだ。なら、滝田さんは、ユースでおまえといっしょに全国制覇したメンバーを補強の候補に上げてくる」
「2部入りを世話するとかいう話もあったみてーだけどな。そのひとりが、マコってやつなんだろ?」
「状況が変わったのはうちだけじゃない。どこもこれから契約更新でもめて、移籍市場はベテランから若手までどんどん選手があふれだす。新人が入り込む隙はなくなるだろうけど、うちでなら、クビになったよその若手なんかよりはるかに計算できるから」
赤間はうつむいた。
こんな形で、江野といっしょにプロになる、という願いは叶うのか、とおもう。
自分が何よりも望んだことが、こんな、残酷な形で──
「後輩たちを守ってやれないのは、申し訳ないけど。直にもまだまだ無理だし、おまえにばっかり負担がかかる」
「がんばりすぎることねーぞ。おまえは、おまえのやりたいことだけやってりゃいい。つっても、そのマコってやつが同期大事なやつなら、いっしょくたにおまえが助けてやる羽目になるのかなー。ほんっと、嫁にくらいもらってもらわなきゃ、割に合わねーな」
大樹のことばに、おもわず赤間は吹き出した。
「俺なんかを、マコの嫁にするわけにはいかないよ」
「なんでだ。賢いし、いつもにこにこしてヨユーたっぷりの、器量良し。ついでに、稼ぎもいい。いっしょにいて、ぜーったい食いっぱぐれることはねーし。何より、セックスはサイコーだ──いてっ!」
最後のひと言で、大樹を殴ったのは一樹だ。
「バカ言ってるんじゃない。そんなものが優児の売りなわけないだろ。優児の愛は、決して自由を妨げない。自由を妨げてまで、欲しない。どこまでも与える愛だ。すべてを与えてやりたいからこそ、優児には、欲しいと言えない。相手が、自分から捨ててくれるんでなきゃな」
「捨てさせないよ」
「おまえの愛は、何を捨てても手にする価値があるよ」
「俺が女だったらね。マコに、溺れるほど与えてあげるんだけどなあ」
「女だったら、か。──いちばん、せつない願いだな、男には」
「ん……」
「優児。おまえにさー、この部屋やるから。ここにいるときはさ、思う存分、女でいろよ」
「──は?」
「なに、バカ言ってるんだ、大樹」
「あー、ちがう。女装してろとかいう意味じゃねーよ。そりゃ、したきゃしてたっていいけど。そうじゃなくて。おまえはこの部屋で、女になって、『マコ』に抱かれるんだ。結婚して、しあわせに暮らすんだ。毎晩、セックスしてさ。──好きなだけ、想像してろ。俺が許す。ここを出たらおまえはサッカー選手の赤間優児かもしれないけど。ここにひとりでいるときは、おまえがなりたいすがたを手に入れてる、『マコ』の嫁でいろ」
大樹は真顔だ。
一樹が、あぜんとした顔をしている。
おもわず、赤間は吹き出した。




