すべてを分け合う
「そうだ。だから……やさしい手を、守りたい。俺が、守りたいんだ」
「そうだなー。俺も、おまえと離れるのだけが、心残り。いっそ、一樹だけ売っ払って、おまえのそばにいたいなーっておもうよ」
「──おい。大樹、おまえな」
「けど、ごめん。優児。一樹だけ、売らせるわけにはいかねーんだ。俺たちは、すべてを分け合う。願いも、痛みも、よろこびもな」
大樹が、赤間の肩を押して、体を離す。
「おまえをさらって行きてーけど、それもできない。おまえをさみしくさせてもな、俺たちは、FFが大事なんだ。おまえの身はおまえ自身が守れるけど、FFは、誰かが守ってやらなきゃあっという間に消えちまう。自分で、守ってくれる手を求めて行くこともできない」
「そう。俺たちは、ここで、FFに育てられたんだ。優児とちがってな。だから、FFは、俺たちの手で守る。守れる道を行く。──優児はぜんぶわかってるはずだ。俺たちが、これでいいって言うわけも、ぜんぶ」
──わかる。
今ここで、IGAから経営的自立をはかれば、もう二度と、切り捨てられることはない。
自立とは、自由を得るということだ。
経営の腐敗は、木の幹の腐敗とおんなじこと。
放っておくと、立ったまま腐って枯れて、二度と蘇ることはない。
養分の出ていく先とも言うべき枝葉を一時的にでも落としてしまえば、幹に力を蓄えられる。
健全な幹のもとで、枝葉は、また一から伸ばせばいい。
わかる──理屈は、わかるのだ。
「俺たちはいつかまた、ここにかならず戻ってくる。そのために、今は出て行くんだ。犠牲になるだけじゃない。ここを出て、ここで育つよりもっと成長できる道を行くんだ。これは、きっとそのチャンスだから。そうおもって行ってくる。行かせてくれ、優児」
「……一樹」
「そんな顔するなよ。ほんとうに、おまえをさらって行きたくなる。おまえはひとりしかいないから、ぜったい、大樹ともめる。それに──」
「そーそ。それに、おまえには、俺たちよりずっと大事なお宝があるだろ? 俺たちがいないと死ぬみたいな顔したって、だまされねーぞ。おまえは相手がカモンって言えば、俺たちのことなんか捨てて、よろこんで嫁に行くんだ」
「江野誠────そいつがそばにいれば、優児はさみしくないよな?」
はっ、と一樹の顔を見返す。
こく、とうなずきが返った。




