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サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
8:曽根兄弟売却/高3冬
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世界同時不況

「あのくそオヤジ! 売るって言った。あんたたちを。物じゃあるまいし!」


ソファを蹴りつけた赤間を見て、双子が顔を見合わせる。


「滝田さんが言ってるわけじゃねーって」

「そう、あのひとは売りたくなんかないっておもってくれてる。自分が育てたんだからな」


赤間のそばにきた一樹が、背中に手をまわす。

そうされると、赤間はいつだって、心の奥のいちばん繊細な部分に触れられている気がした。

ささくれだったところを、一樹の手だけが、やんわりと撫でて癒してくれる。

じんわりと、乾いた場所に何かが染み出してくるのだ。


「理由も、聞いたか?」

「──IGAが経営の自立を迫ってる、って。世界同時不況……あれのあおりで、FFに構ってたら母屋が吹っ飛びそうってことなんだろ」

「そう。ちゃんと優児は、新社長が経営に疎い滝田さんをそそのかしてるわけじゃなくて、そうせざるを得ないんだってことが、わかってる」

「たしかになー。滝田さんは、金はどっかから湧き出させるのが経済人だろーとか言ってた。話になんねーよ」


赤間は顔を上げた。

大樹は、こんなときでもヘラヘラと笑っている。


「……でも、母屋はそうかんたんに吹っ飛ばない。資本の規模も、人材も、まるでちがう。ここ一、二年は資本を減らすことになったとしても、耐えて乗り切るくらいの体力は持ってる。なのに、──楽して乗り切りたいがために、いちばん楽に切り捨てられるところを真っ先に切り捨てたんだ!」

「おまえはほんっと、賢いな」


よしよしと、一樹が頭を撫でてくれる。


「おまえがうちの社長だったら、IGAに乗り込んでって、きっとFFごといかに母屋を守ればいいか教授してやったりするんだろうなー」

「──とりあえず、無能な新社長なんかクビにしてやる」

「でも、いいんだ、優児」

「よくない! ぜんっぜん、いいわけない!」


とん、と肩を叩かれた。

興奮をなだめるように、二度、三度と。

そのやさしさに、胸がつまる。


「いいんだ、優児。おまえは、ちゃんとわかってる。FFは、IGAにとって、いちばん楽に切り捨てられるところ──ただのお荷物なんだって」

「………………」

「FFは、親の金をあてにして、リスクも負わずに遊んでた放蕩息子とおなじなんだ。メリットを返せないなら、放り出されても仕方ない」

「タイトルは取っただろ」

「十年かかってもひとつだけ。そのあいだに使った金は、経費として見合うかどうか────IGAの経営陣は一流だ。金が余ってたときならいざしらず、苦しくなればどこから切るかなんて、何年も前からとっくに決めていただろうとおもうよ」


一樹の言うことは、頭ではわかる。

赤間だって、ふたりのことがなければ、IGAの手際をむしろ賞賛したかもしれない。



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