優先順位
「マコにとっては、いちばん大事なものを、仲間っていうんじゃないの?」
「うーんんん。そうかなー。そりゃ、俺たちも、マコのことは大好きだし、大事な仲間なんだけどさー。心の中で優先順位があるのが人間ってもんじゃない? ほら、教師とかコーチだって、表面では公平に、って言ってても、ぜったいお気に入りとか、贔屓してるやつとか、いるだろ?」
おもわず、赤間は潤を凝視した。
公平な人間というのは、優劣をつけないのではなく、それを表面に出さないだけ、とは考えたことがなかった。
江野の中にも、優先順位があるのだろうか。
江野は、そんなものない、といった顔で沈黙している。
それを見て、赤間は、あるからこそないふりをするのだ、と直感した。
「──潤」
「ほえ?」
「お礼に、ひとつ忠告。おまえ、サイドよりボランチをやった方がいいよ。おまえの場合、スピードは平均的だから、直くんなんかと比べたときに、どうしても見劣りする。でも、キープ力はあるから、サイドじゃなくってもボールを溜めておいて、裏に出せる。それは、潤の武器だ」
意外そうに、江野の目が赤間を見た。
潤の方は、首をひねっている。
「俺、何か、お礼されるようなことした?」
「俺はどっちだっていいけど。同期が多い方が、マコはよろこぶとおもうから。もうしばらく頑張って、プロにすべり込みなよ」
「すべり込んだらなれるもんなの? あー、でも、練習生とかなった先輩いたな。うちで昇格できずに、2部だけどパボ・レアルに拾ってもらった先輩もいるんだっけ。そう考えたら、どうにかなりそうな気がしてきたぞー」
ばしん、と潤が江野の肩を叩く。
「頑張ろうな、マコ。なんか、優児に言われたら、できる気がしてきた。まだ、今年のシーズンも終わってないし。監督とかチームも、どうなるかわかんないもんなー」
潤のことばは、カラリと明るかった。
つられたように、江野が笑みを浮かべる。
ふたりがFFでプロになれるとしたら、どういうメンバーの変動が必要だろうか──そんな問いもうっすらと赤間の頭を過った。
どういう形であれ、江野は自分といっしょに、ここFFでプロになるのだ……そうおもう。
が、一ヶ月もしない内に、赤間は、自分の甘さを嫌と言うほど思い知った。
どういう形であれ、などとおもったこと。
江野といっしょにプロになることしか、考えなかったこと。
その願いの代償は、赤間にとっては痛恨とも言うべき、大きなものだった。




