タイムアップまで
潤:苗字はないな(爆) 江野と赤間の中学時代からのチームメイト。
「マコには辛いのはわかるよ。でも、先に進んで。どんな形でも、ほんとうは構わないんだろ? かっこ悪くても、マコはタイムアップまで足掻いて、結果をもぎ取ろうとするはずだよ」
「おまえは、……なんで────」
「なんで、マコにだけ、手を差し伸べるのかって? それはね、マコだけが、それに値するからだよ。一方的に頼り、期待するような関係を仲間とは呼ばない──そう自分に戒めて、俺にも仲間として接してくれたのは、マコだけだ」
「……でも、──俺は」
「いいんだよ。俺は、キャプテンを助けるのが役目の、副キャプテンだからね。最後まで、マコを助けるよ。……まだ諦めないで。時間はある。俺がついてるから」
手の下で、こく、と後頭部がうなずきを返す。
赤間は、ほっとした。
江野に言ったことは、嘘ではない。
いかな赤間だろうと、諦めてしまった江野を救うことはできないのだ。
「俺、トップチームの試合に出てて、わかった。プロでも、ほんとうに強いチーム以外は、やってるのは案外、ミスの応酬だ。だから、そこをフォローに走るマコには、ちゃんと生きる道がある。それ以上のことは、追々身につければいいよ。マコは歩みを止めないから、大丈夫。どこまでも、一歩ずつ昇って行ける」
「振り返るなとか、俺には言っておいて……」
「ふふっ。俺を誰だとおもってるの。うしろ向きだろうが、昼寝しながらだろうが、行きたい場所があるならちゃんと行くよ。行けるに決まってるからね」
江野が、顔を上げた。
「曽根さんたちといっしょに、代表にもか?」
「代表かー。あんまり興味ないな。でも、アニキたちといっしょなら、海外旅行も楽しいかも」
「かっ、海外旅行じゃなくて、海外遠征だ!」
むきになった江野に、体を押しやられる。
赤間は、逃げた体温をいっしゅん目を閉じて惜しんだ。
「ちなみに。マコは、観光地に行くのと南の島でバカンス、どっちが好み? ──へー、バカンスか。ちょっと意外」
「心を読むなっ!」
「マコの表情は読みやすいから。ごめん。でも、いつか、オフに行こうね。マコと行くなら、別荘買えるくらいに稼ぐのも、悪くないかも」
何か言いたそうな顔をしたが、江野は何も言わなかった。
マコー、といずこからか呼ぶ声がする。
振り返れば、駅の方向から携帯を手に走ってくるチームメイトの姿があった。
「見て、見て、マコと優児のラブシーンの激写!」
「潤、おまえな! 今すぐ消せ」
「えー、せっかくネタにしようと撮ったのにー」
「その写メ、俺に送って」
言ったら、ごん、と江野に殴られてしまう。




