『彼女』との下校
手をつなぐでもなく、淡々と並んで歩いてくる。
バス通り側を、さりげなく彼氏が歩いていることに、あの小柄な女は気づいているのだろうか。
電柱の横を通るたび、背後から追い越していく自転車の存在を気にかけている。
いっしょにいて、バカみたいな話で間を持たせるのが、やさしさなどではない。
居心地が悪そうな顔で横を歩く少女に、ほんとうに、彼の価値がわかっているのだろうかと、赤間はおもう。
「それが、マコの彼女?」
駅の構内から数歩踏み出して声をかけると、小柄な女の顔がぱっと仰向く。
その目が見開かれ、ほのかに頬が朱に染まったのを赤間は見逃さなかった。
この女はダメだよ、マコ──
そう、内心で赤間はつぶやく。
体操でもやってたのだろうか、とおもえる姿勢のいい小柄な少女。
ひと言で言えば、かわいい小動物系。
江野が自ら恋をするタイプではないとおもう。
「優児……なんで、おまえがこんなところに?」
「話があるから。いっしょに、マコとクラブハウスまで行こうとおもって。彼女とは、どこまでいっしょ?」
「あ──それじゃあ、私は、本屋さんに寄って帰るから。江野くん、また明日、ね」
「ああ、気をつかわせてごめん。気をつけて帰って」
手を振って別れる江野を、赤間は黙って見つめていた。
「──で?」
赤間の方を向くなり、江野のまなざしは一変した。
「俺にも、あんなふうにやさしく話しかけてくれればいいのに。冷たい声だなー」
「話があるんだろ?」
「ここでするの? 同級生たちの目もあるんじゃない?」
江野が、むっと眉をしかめる。
江野と赤間は、通う高校がちがう。
ちがう制服を着た、一八〇センチ超えの長身ふたりが並んでいると、それだけでも人目を引く。
黙って電車に乗ると、クラブハウスの最寄り駅で、ふたりは黙って降りた。
「マコはさあ。プロになるのを諦めたの?」
「ユースからトップに昇格するのは、おまえと、充と翔太の三人だけだ」
「……とりあえずは、そうだね」
「もう、大会は終わった。優勝もしたし、やれることはぜんぶやったつもりだ。その結論が、昇格は三人だけ。なら、仕方ない」
「そう──」
赤間はうなずいた。
隣を歩く江野が、眉を寄せる。
『KFJ』では説明したかな? ユースからのプロ入りは、同じクラブのトップチームに昇格、って形になります。それがダメだったら、ほかのクラブに行ったりもしてるはず。どっちにしろ、狭き門ですが。




