大樹の想い人
去りがけに、ちゅっ、と一樹の頬にキスをする。
「よくわかんねーけど、優児をなぐさめてやってくれ。傷ついてるときはこいつ、俺よりおまえと居たがるんだ」
大樹が出て行ったドアがぱたんと閉まると、赤間は一樹と目を合わせた。
「あれって、すねてたの?」
「すねてたな。あいつは、おまえのことが大好きだから、自分だって求めて欲しいし、なぐさめてやりたいとおもってるんだ」
「……そうだね。愛されてるのはわかるよ。もう、俺に、全身投げ出してくれるもん。きもちいいからだって言ってるけど、それだけじゃないってことくらいわかる」
「迷惑か?」
「まさか。大樹は、出会ったときから愛情全開だった。それが心地よかったんだ。でも、大樹だけじゃなく、俺は一樹も欲しかった。欲張りだからさ」
「俺だって、大樹におまえを独り占めされたかない。おまえを見てると、無性に甘やかしてやりたくなるんだ。抱けって言うなら抱くし、抱きたいっていうなら抱かれてやるよ」
そっと、頭から頬に手がすべり下りてくる。
見下ろす先で、ふっ、と一樹が苦笑を浮かべた。
「ただ、弟だとか言っといて、どこがだっておもったりもする。ほんとに、大事におもってんだけどな……」
「そういう一樹の堅いところが、俺は好きだよ」
「江野誠と似てるから、か?」
「マコは堅いどころか、カタブツだから。俺が一樹や大樹とこんなことしてるって知ったら、軽蔑されちゃうんだろうな」
「……直が、優児はもうとっくにマコに軽蔑され尽くしてるとおもう、って言ってたぞ」
「直くんめー。──ああでもね、これは秘密なんだけど」
「ん?」
「マコのファーストキスの相手って、実は俺なんだよ。俺は、男に乞われて、好きでもないのに平然とキスしたやつなわけ。軽蔑されるには十分な理由だよね?」
笑ったら、強い力で頭を抱き寄せられた。
「好きな相手にきもちを隠してキスするしかないやつに、平気でキスを乞うやつの方が、よっぽどひどいじゃねーか」
「うん。でも、マコは仲間のためなら体を張る男だからね」
「──優児」
「なに?」
「例え、機械的なキスでもな。思い出したくもない相手とはキスなんてしねーもんだよ。自分から乞うなら、なおさら、いちばん後悔しない相手を選んでるに決まってる。自信もて」
「そうかなー」
「ぜったいそうだ。俺より純情な男なら、その経験は胸の奥にしっかりと仕舞い込んでる。軽々しく扱ったり、ましてや軽蔑なんてしてないさ」




