彼女──
「やられるのは苦手って、そのときに味わった恥ずかしさのトラウマなんじゃない? 大樹が俺くらいの年のころの話?」
「…………そ……そうかも」
「あはは。だから、優児にやられるの、あんな嫌がってたんだ? 気分だけ、童貞時代に戻ってたわけだ? そりゃ、死ぬほど恥ずかしいよなー。すっかりセックスなんて慣れてるとおもってたのに、反応が童貞状態なんて、そら焦る!」
けらけらと大樹がベッドで笑い転げる。
手にしていた本を、一樹が投げつけた。
「うるさい。おまえ、犯されたいのか。優児の下でひーひー言わされてるのは自分だっておんなじだろ!」
「──一樹」
大樹の脇腹に直撃した本を、赤間は取り上げた。
「抱く気があるなら、俺にして」
「大樹とやったんじゃ、足りないのか?」
「うん……ダメ?」
「一樹のセックスの方がねちっこいもんなー。愛されてるかんじがするんだろ、そっちの方が」
くしゃ、と一樹が髪を掻く。
「ダメじゃねーけど。おまえまだ、いちおう高校生なんだよな……」
「少年、ってガタイじゃねーじゃん、こいつ。ほぼ成熟してるし。やりたい盛りだもんな? 好きな相手のことはずーっとガマンしてるんだぜ。かわいそうだろ」
一樹は、くしゃくしゃと髪を掻いてから、のそりと椅子から起きあがった。
と、デスクの上で小さなライトが点滅し、振動が起こる。
「優児の携帯だ」
「電話? 誰?」
「……古賀、礼」
「礼か。なんだろ。取ってくれる?」
赤間がベッドの縁から足を下ろすと、一樹が携帯電話を手渡してくれた。
立ち上がり、窓際に行く。
「もしもし、礼?」
電話の向こうからは、細い謝罪の声が返った。
「いいよ。どうしたの? ……え? ────彼女?」
窓に映った大樹と一樹が、顔を見合わせている。
赤間は、息を吸った。
「ううん、おしえてくれて、ありがと。本人に訊いてみる。まあ、俺には関係ないって言いそうだけどね」
笑って、二言、三言交わした後、電話を切った。
振り返れば、双子はめずらしくそっくりなまなざしを向けてくる。
「優児」
「どうかしたか?」
問いに、微笑を返した。
大股でベッドに歩み寄り、立っていた一樹の体をベッドの上に押し倒す。
「おい?」
「ごめん、一樹。やっぱり、抱くほうがいいな」
ぎょっとした視線が返る。
けれど、苦い顔をしながら、一樹は自分の手で、シャツのボタンを外しにかかった。
「優児。入れるのは、勘弁してくれ」
「うん、大丈夫。でも、いっしょにイッてね」
「……アレでか?」
「うん、アレで。大樹は先にイッちゃうから、やってもつまらないんだ」
「わーるかったな! んじゃー、ベッドはトレードするか。俺は向こうで寝るよ」
「見てないの?」
「おまえに嫉妬しちまいそうだからなー。やられてる一樹は無駄に色っぽいから、俺まで抱きたくなる。だから、遠慮しとく」
ひらひらと手を振って、大樹はベッドを降りた。




