「苦手なことは──」
「アニキって、呼んでいいの?」
「もちろん。これからは、俺たちのそばが、おまえの帰る場所だ。好きに、欲しいものを追って行け。さみしくなったら、俺たちのところに帰ってこい。誰にだって、そういう場所は必要なんだ」
「一樹はずるい。かっこいいセリフは、いっつも独り占めしてー。優児、優児、うちに来るなら、俺と寝ような。おまえが欲しいだけ、俺が、ぎゅってして、なでなでしててやるからなー」
「……どこを?」
「どこ? あー。全身、くまなく?」
にっ、と大樹が笑って答える。
とたん、ごん、と一樹が大樹の頭を殴った。
「おい。相手、まだ高校生だぞ。せめて、直の前ではよせ。魂魄がどっか飛んでいった顔してるじゃねーか」
「いてーな。つーか、直はもうすぐ一九だろうが。ガキあつかいしてやるな。直、無修正横流ししてやろうか。アジア系と欧米系、どっちが好みだ?」
「直くんはオタクだから二次元萌えだよ」
「あー……わりぃ。それは管轄外だわ。自分でエロゲーでも買ってくれ」
「ゆっ、ゆゆっ、優児おまえなー!」
われに返ったらしい神前が、顔を真っ赤にして怒っている。
中学生のころと大して変わってないな、と赤間はおもった。
「まーまー、こいつらのペースに乗ることないって。ディフェンダーの心得、その一。──それより、仲良くやろうな、直。ディフェンダー同士、わからないことや困ったことがあれば、何でも言え。プロの世界でも、先輩は頼っていいんだからな。安心しろ」
「ううっ……、俺さっき、優児にさんざん、あんたがプロで戦っていけるとはおもえない、とかっていじめられて──」
一樹が、困った顔で赤間の方を見る。
「直くんは甘すぎるから、勝負事にはあんまり向かないとおもうって言っただけだろ。プロスポーツなんて、八割方、騙したもん勝ちだよ?」
「……ちがいねー」
ぷっ、と大樹が吹き出した。
「まあ、そのとおりだけどな。直が騙さなくても、直の動きを使って他のやつが敵を騙せばいいじゃねーか。それがチームスポーツってものだろ。全員が完璧である必要なんかない。誰かが苦手なことは、得意なやつがやればいい。直にできないことは俺たちがやる」
「一樹さん……!」
「じゃあ、俺たちに無理なことは、優児がやってくれ。そのかわり、おまえの苦手なことは、俺たちがやるからさ」
なっ、と肩を抱いた大樹に笑いかけられる。
「そうだね。俺には無理で、直くんにならできることも、いっこくらいはあるとおもうよ?」
「優児、コノヤロー! おまえぜったい、俺を先輩とおもってないだろ」
「うん。おもってない。そもそも威厳がない」
「くっそぉー」
「泣くな、直。俺たちだって、五つも年上なのに、二歳くらいしか、ちがう気しねーから」
「おまえさー、ユースとかけ持ちするんだって? もう、トップに専念しちまえよ。高校だってよゆーで卒業できるだろ。さっさとプロ入りしちまえ」
「……それは、無理」
「無理?」
大樹が意外な顔をする。
「優児は、同期のやつらといるのが好きだから」
「仲間が、全日本ユースで優勝するんだって言ってるからね。そっちを置いて、トップには来られない。トップは、トップのひとたちで何とかして。力は貸すから」
一樹と大樹が顔を見合わせた。




