義兄弟
「まあ、二〇年計画ぐらいで強くして、十年もトップに君臨してればスタジアムの方が見劣りしてくるだろうから。そこで建て替えたとして……五〇年後には、世界にFFの名が知られてるといいね。そのくらい気長に行けば、不可能な話じゃないとおもうよ」
「……今、ちょっとその図が見えたかも!」
「うおー、天才すげー。こっちこい優児。頭、撫でてやる。…………よしよしよし。んで、もってさ。もう十年くらい、早くなんねー?」
両手でぐしゃぐしゃと頭を撫で回しながら、大樹が真顔で訊く。
赤間は、くすっ、と笑った。
「二割も値切るの? そりゃ、できなくはないけど、俺が助けてあげたいとおもう人間って、めったにいないんだよね」
「そうか、そうか。ありがとなー、優児。心配しなくても、俺らだっておまえのこと、めったにいないくらいかわいがるって。俺はおまえを弟だとおもうことにする。もちろん、一樹の他に兄弟は、おまえだけだ!」
ぎゅむ、と頬に頬を押しつけて抱擁される。
カアッ、と頬が燃えた。
なぜって──
「おまえさ。まだ優児は、助けてやるなんて言ってないだろ」
「アホか、一樹。できなくはないってのは、やる気があるってことだろ。でも、希少価値なんだからな、って念押ししてるんだよな? 要は、俺のこともちゃんとかわいがってくれよ、って言いたいわけだ。な、な?」
まったく、きれいに、バレている。
一樹のため息が聞こえた。
「大樹はこんなで、ちょっと強引だけどな。うざいなっておもうときは、俺のそばにおいで。どっちにも、好きなだけ甘えりゃいいよ」
赤間の顔をのぞき込んだまなざしが、ふっととろける。
「俺たち、ガキのころ、よくどっちが兄貴だ弟だって、ケンカしたけど。要はふたりとも、兄貴としてかわいがる弟が欲しかったんだ。弟をかわいがる自分じゃなきゃいけないような気がしてたっていうか……うまく言えねーけど」
「そういうプログラムが入ってた、ってかんじ?」
「あー。うん、そうだな。弟、イコール、うんと愛してかわいがれ、みたいな。しかし肝心の弟がいなくて、ふたりで、おまえの方が弟だろ、いやちがう、ってもめてた。ハタチも過ぎて、ひょっこり、血の繋がらない弟が現れるとはおもわなくてさ。だからなんか、妙に、おまえが弟ってのは、しっくりきてる。──嫌か?」
赤間は首を振った。
自分は、欲張りだとおもう。
いつか、礼に「三人目もできるかもしれない」と言われたとき、そんなものいらないとおもった。
けれど、三人目は、ふたりいた。
ふたりがかりでなければ、江野を追っても埋まらないさみしさは、きっと補ってもらえなかったのだ。
あっちからと、こっちからと、ふたつの体、四本の腕があってようやく、赤間は包まれている、支えられていると、実感する。
もうひとりぼっちではないと、ほっとできた。




