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サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
5:トップチームデビュー/高3春
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相応しい難易度のお宝

「おい、一樹──」

「優児? どうした、優児? 泣いてるのか?」


背中にそっと手が触れる。

じわりと、風穴の空いた胸に、何かがにじみ出した。


「よく、わかんないけどさ。おまえはきっと、さみしかったんだよな? 何でもひとりでできるから、ひとに甘えるってことを知らないんだ」


よしよしと、後頭部を撫でられる。

一樹の手つきだ。

と、目の前に跪いた誰かに、がばりと頭を抱きしめられる。

こちらは、大樹の腕だとすぐにわかった。


「かわいそうに……でももう、水なんかいらない、そんなもの注がれたら腐って死んじゃうって、サボテンみたいにつんつんしてなくていいぞ。俺たちが、太陽だけめいっぱい浴びせてやるからな。ふつうなら干からびちゃうくらい浴びねーと、おまえは満たされないんだよな? だから、そんなクソかわいー顔してるんだろ?」

「大樹。優児の顔は、どう見てもかっこいい系だろう。失礼なこと言うなよ」

「だからかわいいんじゃねーの。黙ってひとりで立ってりゃ、手も足も出ない完璧超人にしか見えないところが、めちゃくちゃかわいい。でも、この世にいるからには完璧じゃないんだろ? 何を手に入れたら、おまえは満たされるんだ?」


すぐそばで、大樹の呼吸が聞こえる。

耳元に寄せたくちびるを、赤間はかすかに動かした。

その名を、口にした自分に、自分でおどろく。


「そっか。まあ、さっぱり何のこっちゃら、だけど。いいじゃねーの。おまえがかんたんに手に入れられないってことは、おまえに相応しい難易度のお宝ってことだろ。そういうのにしか、心惹かれねーようにできてるんだな。楽に手に入るようなもんじゃ、追ってもつまんねーもんな!」

「お宝……」

「俺らのお宝はさ、ひとりじゃムリゲーってかんじ。だから、ふたりがかりなわけ。な、一樹?」

「ふたりがかりでも、けっこう厳しい。だから、優児が協力してくれるとうれしいな。おまえにはつまらない夢だろうけど、おまえにも追うものがあるなら、そのかけがえのなさくらいはわかるだろ?」


彼らにしてみれば、赤間が追うものも十分馬鹿げているだろう。

赤間が最高にいい男だ、と主張するたび、江野を良く知る礼でさえ困った顔をするくらいだ。


「日本一になることが夢なの?」

「うーん。ちょっとちがう」


大樹の腕から逃れさせ、赤間を立たせてくれた一樹が、やんわりと肩を抱いてくる。

もう五年以上のつき合いだが、江野を含め、同期の誰も、赤間にこんな触れ方はしてこない。


「俺たちはさ、この福岡を、サッカーの強豪クラブがある都市、にしたいんだ」

「……バルセロナとか、マンチェスターとか、ミラノみたいな?」

「そう! その国に行って何をするのかと言えば、サッカー観戦しにあそこにも行きたいなっておもわれるような都市。名物はサッカー、っていう」

「なるほどね。でも、人工島のあのスタジアムはどうかなー」


一樹と大樹が、たちまち顔を見合わせる。


「さすが。一発で、最大の問題点を射抜きやがった……」



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