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サボテンとクリームコロッケ -二重らせん-  作者: 十七夜
5:トップチームデビュー/高3春
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メビウスの輪

ふと、神前と目が合う。


「すごい。あの優児が毒気抜かれてる」

「うるさいよ、直くん。というか、これが昔言ってた、すごい先輩たちってやつなの? たしか、尊敬するぞって言ってたよね?」

「すっ、すごいんだぞ。ちゃんと、すごいんだからなっ?」


ムキになって言い返す神前を見て、くすくすと一樹が笑う。


「いやあ、言うほど大したこっちゃないな。だから、おまえたちが来るのを、俺たちはずっと待ってたんだ」

「そうそ。俺たち、このファルケンを日本一のチームにしてーんだよ」

「日本、一……」


ちら、と神前の視線が赤間を向く。

おまえならできるよな、そう言っていた。


「いっしょに、ここを、日本一のチームにしよう」

「俺たちに力を貸してくれ。直、──優児」


ハイ、と感動しきった顔で、神前が応じる。

赤間は、あっけにとられていた。

今や、高校サッカー界の覇者となっている長崎仰星の桜井と鈴木を見たとき、ふたりはコインの表と裏だとおもった。

永遠に交わることのない、まるで、二重らせんのような関係だと。

今、目の前にいる双子も、表と裏を成しているように見える。

けれど、彼らは『二重らせん』などではない。

生まれたときから、ふたりで完全に完結してしまっている、完璧なほどの絆の形──


「メビウス……」


そう、まるで、メビウスの輪のようだ。

どちらが表とも裏とも決められない。

どちらもが表であり、裏でもある。

どこにも始まりはなく、また、終わりもない。

あるのは、どこまでも、どこまでも、永遠にめぐる、ふたりでひとつという、この世に許されたもっともうつくしい不動の絆。


「おーい? 優児、どうしたー? 宇宙と交信でも始めたのか?」


目の前で、ひらひらと手を振る、とぼけた男。

神前のそばで、バカだな、とでも言いたげに、そのうしろすがたを見つめる相方。

双子、という形。

自分とおなじ親を選んで生まれてきただけで、妹をとくべつなものにおもえた。

だからこそ、おなじとき、おなじ場所に、いっしょに生まれてきたふたりの間にどんな絆があるのか、赤間には痛いほど想像がつく。

どんなに離れても、離れても、離れても、その結びつきは、永遠であり、決して壊れはしない。

誰にも、何者にも、決して、壊せない。

生まれてきて、誰かと結ばれるのではない。

結ばれた形で、この世界に、生まれてきたのだ。

そういう絆の形も、あったのだ。

あったのだと、今さらながらに、思い知らされる。

かくん、と膝が折れた。

胸に、ひゅーひゅーと風が吹き抜けていく。

どうして自分は、そんな形で生まれては来なかったのだろうか?

どうして、自分は、ひとりで生まれて来たのだろう?

ひとりぼっちで。

手に入らないものを、追って、追って、永遠に追いつづけて、いつか、ひとりで死んでいく──

そんな絶望を味わいたくて、生まれてきたのだろうか。

そんなことのために、自分は、生まれて来たのか……?



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