性(さが)
『それだけじゃないとおもう』
「え?」
『優児が目の届くところにいると、安心なんだとおもう。同室のひととうまくやってるかー、とか気にしてなくていいじゃない。マコはきっと、離れてたって仲間のことを気にかけてるひとだから』
「礼のことも、気にしてる?」
『私はもう、仲間じゃないけど。でも、週に一度はかならずメールをくれるの。どうしてる、元気か、顔見せに来てくれ、なんて。だからね──』
礼が笑った気配がした。
「うん?」
『だからもし、マコに彼女ができても、ヤキモチやいちゃって、それほど長続きはしないとおもう。マコのあの、下心ないやさしさを心から愛せるひとじゃないとね。私だけ見て、っておもうようじゃ、マコとはつき合えないだろうなって』
「とくべつな相手は、ちゃんととくべつ扱いするんじゃないの?」
『どうかな……マコは、自分が好きな相手じゃなく、自分のことを好きだって言う相手を選びそうな気がするから』
「──それは、そうかも」
見えるはずもないのに、電話の向こうに向かって、赤間はしみじみとうなずいた。
「そうだなー。マコは、好きだって言われたら、大して好きじゃない相手とも、つき合っちゃいそうな気がする」
『マコの、性よね』
「困った性だよね。それでそのまま、結婚して、家庭を築くなんて、いちばん下らないけど、マコならいちばんありえそうなパターンかも。マコが選びたいなら何を選んだっていいんだけど……そんなふうになって欲しいわけじゃないんだけどなー」
くすっ、と礼がまた、電話口で笑った。
『私はね。それくらいだったら、優児とくっつく方が、マコは一〇〇倍も、一〇〇〇倍も、しあわせだとおもうけど』
「俺はそうはおもわない」
『マコを、この世でいちばん愛しているのは、優児よ。自分が好きな相手よりも、自分のことを好きだって言う相手をどうせ選ぶのなら、優児を選ぶのがいちばんしあわせに決まってる』
「礼……」
『だって、マコが欲しいのは、自分のぜんぶを受け入れてくれる相手だってことでしょう? 外見とか、自分がドキドキするかよりも、自分の存在に、よろこびを感じてくれるひとがいいってことよ。誰が、優児に敵うっていうの?』
ひんやりと、心が冷えていく。
背中から、ぞっとするような恐怖が這い上がってきた。




